「カイジさん」
アカギが俺の身体を抱き締めてくる。
「ねえカイジさん、行かないでよ、カイジさん」
どこにもいかねぇよ、って言えば本当に?って何度も何度も問いかけてくる。
「カイジさん」
俺の胸元はアカギの涙でびしょびしょだ。
「一緒にいてよ、」
何度このやり取りを繰り返したかなんてとっくに数えてない。
成人しかけた男がする行動じゃないってこともとっくにわかってる。
頭や背中を撫でてやると少し落ち着いてくることが最近わかった。
「カイジさん、好き、好きだよ、だからどこにも」
何度目か見当もつかない「行かないで」を、唇を繋げて飲み込んでやる。
そしてアカギに負けないくらい、きつく抱き締め返してやるのだ。
どうして、なんて問いは、未だに棄てられていない。
17365回目のどうしてを、俺はいつものように抱擁でアカギに伝えた。
17366回目の涙を、アカギに悟られないようにしながら。
きっと伝わることは、ないのだけれど。