また陽が昇る頃にはアカギは平熱に戻っていた。身支度を整え、玄関へと向かう。

「…迷惑をかけました」

アカギはカイジに背を向けながら言った。カイジにはその背中がこれまでの出ていく姿とはちがうように見えた。まるでもうここには来ないとでもいうような、拒絶の色がアカギの背に染みているように。
じゃあ、と歩を進めるアカギの腕をカイジは思わず掴んだ。

「アカギ!!」

腕を掴まれたアカギはばっとこちらを向く。その反応にすら拒絶じみた何かを感じて、なんだか少し泣きそうになった。
そしてアカギの手に、かねてから用意してはいたもののずっと渡せなかったもの──部屋の合鍵を握らせた。

「いつでも来ていい」
「は、」
「また家の前で凍死しそうになられてもアレだしな…」

アカギがばつの悪そうな顔をしたが、事実なのだから仕方がない。

「…俺が勝手に部屋に入って、何か盗まれたらとか考えないんですか」
「そんなことしてもメリットがないだろ?物欲なさすぎんだよおまえは」

そのかわり、とカイジはひとつの条件を出した。

「敬語、やめろよな」
「……」
「なんか、そういうのとか…いいからさ」

アカギはぽかんとした顔でカイジを見、続いて手に握らされた鍵をじっと見つめた後、ふっと笑った。

「本当に面白い人だな…カイジさんは」

あんたには敵わない、と言ってアカギは去っていった。

ドアが閉まった後、カイジは全身の力が抜けたようにその場にへたりこんだ。

(…猫でも手懐けてる気分だ…)

またアカギがどこかで冷えている─アカギのことだからきっと野垂れ死ぬことはないだろう─と考えるとどうしようもなくなって、カイジは鍵を渡すという手段に出たのだ。
小さな子供でもない、立派な青年に庇護欲を湧かせている自分も大概だな、と思いながらも、カイジは満足げに笑った。
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