[20. 血継限界 第一部]

今日はイタチ、サソリ、角都という、何とも珍しいメンバーで修行をする事になった。
今までの修行である程度はチャクラコントロールやその性質を理解した。

そして、その次の段階。
名無しに元々備わっている苗字の能力。
それを引き出す為の修行だ。
元々この世界の人間だからなのか、少しずつではあるが自分の身体にも変化が現れ始めていた。

「瞳」
こちらの世界に来る前までは両目とも黒に近いこげ茶色だった。
しかし、最近は自分でもはっきりと分かる程にその「色」が変化していっている。
右は濃い青、左は濃い緑。
どちらかといえば、紺色と深緑と言った方が正しいかもしれない。

「ねぇ、白虎。私のこの瞳ってこっちの世界に来てから色変わったよね。これって何か関係あるの?」

ここ最近の自分自身の変化に少し不安を覚える。
先天的なものならまだしも、後天的に瞳の色が変わるなど聞いた事がないから余計にそう思う。
ありえない事はもう大分慣れたはずなのに、自分自身の事になるとまた話は別だ。

「ご安心下さい。それこそが苗字一族の持つ血継限界の「印」でございます。左は精神を右は身体をそれぞれ司っております」

「精神と身体を司る…?」

白虎の話は正直難しい。
何というか…、専門用語的な感じがする。
自分の知識の無さが原因なのは分かっているけど、どう頭を捻っても分からない事は分からない。

この世界には「チャクラ」という不思議な力が存在する。
そしてチャクラには二つエネルギーがある。
精神エネルギーと身体エネルギー。
精神エネルギーは修行や経験などの積み重ねにより成長していくもの。
身体エネルギーは自身を構成する膨大な細胞の一つ一つから取り出すエネルギー。

その二つのエネルギーを組み合わせて、初めてチャクラを扱えるようになるという。
そしてチャクラを使い術を発動させる。

「簡単にご説明致しますと、名無し様がこちらの世界に来られてから様々な修行をされ、精神身体共に「臨血界」を扱う準備が整ったという証でございます」

「証…?」

臨血界。
自分達苗字一族のみが使う事が出来る特別な術。
一族全てが使える訳ではなく、限られた者にのみ発現するという。

この身体に眠る苗字の能力。
正直、自分が本当にこの力を使いこなせるのか不安で仕方なかった。
勿論今でも不安はある。
だけど、この世界に居る時間が長くなればなる程に変化は起き、この身体がいつの日にか完璧にこちらの世界のものになってしまう気がした。

生まれ変わるという表現が一番近いのかもしれない。
この身体もこの瞳も全て。
不安はあるけれど、確信もある。
今の気持ちを言葉にしたら矛盾している事を言っているのは分かっているけど、そう言うしかなかった。

自分はこの能力を使う事が出来るって。

「…かつて、名無し様の母君様である桔梗様も名無し様同様にとてもお美しい瞳をお持ちでした」

そう話す白虎は微笑んでいるけど、私にはまるで泣いているように見えた。
苗字一族を昔から知っている白虎だからこそ、一族の喜びや悲しみを誰よりも知っている。
もしかしたら、私が生まれた時の事を思い出しているのかもしれない。

お母さんと同じ瞳…。
初めて白虎と会った時、おばあちゃんは「似てるでしょ?」って言ってた。
あの時はそんなに深く考えなかったけど、今思えば初めて自分が母親似だと知った時だった。

「また、桔梗様は一族の中でも『四神象華』を扱う事が出来た数少ない御方でもありました」

その言葉に一人の男が反応した。
角都だ。

「四神だと?…そうか、あの時の娘はお前の母親だったのか。…通りで見覚えがある筈だ」

「え…、角都…?」

驚いた。
白虎の他にもお母さんを知ってる人がこんな身近に居たなんて。

自分は両親の事を何も知らないから周りからその知識を集めるしか方法がなかった。
未だ顔も知らない自分の両親。
二人の写真は一枚も残っておらず、おばあちゃんから話を聞く程度しか知らなかった。

「角都はお母さんの事知ってるの!?」

「少しだけだがな」

聞いてみたかった。
自分の知らない色々な事を自分の耳で。

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