[10. 初めての世界]

割り当てられた部屋へと向かう途中、後ろからデイダラに声を掛けられた。
何事かと思い後ろを振り向けばデイダラとその後ろに居るサソリと視線が合った。

「…二人共どうしたの?」

「明日オイラ達と近くの街に買い出しに行くぞ。リーダーに名無しも連れて行けって言われてな。うん」

「え…、私も一緒に行くの?」

リーダーが言うにはこの世界で修行をする以上はそれなりに動き易い服で修行をしろという事らしい。
とりあえず、服だけでも買って来いとの事らしい。
デイダラのその言葉にまず金銭面での事が頭に浮かんだ。
しかし、そんな自分の様子に気付く様にサソリが金の事は心配するなって言ってくれた。

「…うん。分かった、ありがとう。じゃあまた明日」

そのまま二人にお礼を言い、部屋へと向かった。

***

「…なぁ旦那。オイラ達ってS級犯罪者だよな。これじゃあオイラ達名無しのお守だな」

「ふん…、命令だからな。諦めろ」

名無しの後ろ姿を見つめながらそう隣に居るサソリに声を掛ければ、予想通りの言葉が返って来た。
一般人の女と何ら変わらない名無し。
それは本当に忍の一族なのかさえ疑ってしまう程だ。
本当に暁、自分達の役に立つのだろうか。
そんな思いが頭を占めるが、自分がどうこう考えたところで何も変わらない。

戦力として役に立たないのならば、女として役に立てばいいか、などとぼんやりと考えながら自分も自室へと戻る。

***

「うわぁ…、すごい」

今日は彼等のリーダーの計らいにより、近くの街に買い出しに来ていた。
街自体はそれ程大きくはないが、見た事がない色々な店があり街は活気に満ちていた。
初めて見る色々な店に心が躍る。
こういう時、やっぱり自分は女なんだな、と思う。

「好きなの選んで良いぞ」

そう言われ入った店には普通の服とは少し違う、動き易さや使い勝手などを重視した服がたくさんあった。
シンプルな物から派手な物まで様々な種類が置いてあった。

(修行を始めるなら動き易さを重視した服が一番良いよね)

服以外にも下着や修行で使えるような靴も数足。
自分が選んでいる間に二人も買い出しを終えたらしく三人で帰路につく。
アジトからはそう遠くない街だったからか、数十分程でアジトに着いた。
その間、この世界の事について色々と教えてもらった。

この世界には「里」というものがいくつかあり、そこには「影」を筆頭にその里に住む忍がたくさん居るという事。
あとは忍術という不思議な力がある事や白虎以外にも喋る動物が居るとか色々。
その話を聞いてこの世界にはまだまだ自分の知らない事がたくさんあり、学ばなければいけない事もたくさんあるんだと実感した。

「二人共、今日は連れて行ってくれてありがとう。色々買えたから助かったよ」

前を歩いていた名無しが振り返りそう言った。
人に礼を言われるなんて何年ぶりだろうか。
そう思う程久しく感じていなかった。

「一応リーダー命令だしな。明日からの修行覚悟しておけよ!うん」

「命令でも良いの。私は楽しかったから。修行だってちゃんと頑張るよ」

「ククッ、そうか。だが俺達はそう甘くねーからな」

そう応えてやったら、名無しは少し笑いながらそのまま部屋へと入って行った。
これから先、#名無し#の能力が開花した時の事を思うと今から楽しみで仕方がない。
暁の目的を達成した後にでも傀儡として永遠に残る芸術作品にしてやろう。
その時までは育成ゲームの様だ、と一人ヒルコの中で薄っすらと笑みを浮かべる。

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