小説 | ナノ




ゲラゲラ…ぎゃはははっ…!



「んっ…?」


しまった、仮眠だけのつもりが深く眠ってしまったかと飛び起き、ローの安否を確認してからハッと外に下品な気配を察知した。
どうやら彼らの気配を察して覚醒したようだ。
外を確認するともう囲まれてしまっていた。



「くそ…まさか囲まれるまで気付かないとは…!」


鈍ったかなと思いながらも武器を掴もうとした手は空をきった。


「あ?…あーっ…そうだった、身一つで飛び込んだんだった…」


仕方ない、体術で行くしか無いなとせめて少しでも攻撃力が上がるように右足のオートメイルに触れ、錬成をして棘や、鋭い刃をつけた。



「まさか偶々立ち寄った無人島に人が住んでるとはなァ、荷も金目のもんも、全部奪っちまえ!!」


「オオオォ!!!」


「させないよ、悪いこと言わないからこの島から出て行きな」



出て行けば、どうやらただの海賊団の様で能力者がいるわけではなさそうだった。



「あ?いい女じゃねえか、俺達と一緒に来いよ」


「聞こえないの?出て行けって言ってんの」


別に1人ならどうってことは無いが、後ろにあるローを守るとなると話は別。
このまま帰ってくれるのが1番いいのだ。



「おい女!ナメた口きいてんじゃねーぞ!俺達は悪名高いスターズ海賊団だぞ!!」



「いや知らないし」


そう返すと、どうやらキレた様でやっちまえ!!という船長の叫びが聞こえた。



パンッ!バチチチチチ!!


「!?なんだ!?この女能力者か!?」



とりあえず、ローを狙われては堪らないので、後ろのログハウスを囲む様に砂と木を混ぜた、壁を錬成する。



「さて、行きますか!」


「怯むな!!いけー!!」



そうして戦闘は始まったが、多勢に無勢、男と女。
私の体力が尽きるのは時間の問題だった。



「はっ、はっ、(クッソ…ワラワラ湧いてきやがって、キリがない!)」



「ははっ、つえぇが1人で勝てるのか〜?」



「船長!壁を破壊出来ました!」



「よし!よくやった!」



「!?まっ…!!」



雑魚を集中して倒している間に、ログハウスを囲む様に錬成した壁は破壊されていて、何人かの海賊が入っていく。
思わず、そちらを振り返った瞬間に足に衝撃が走る。



「アァッ…!?」


「女、動くんじゃねえよ!安心しろ、お前は俺達の船に乗せてやる!

まぁ、ヒューマンショップに行く間だけなァ」


「ぎゃははっ!船長可哀想っすよ〜!」



どうやら生身の方の足を撃たれた様で、倒れこんだが玉は貫通した様だった。



「くそっ…!!(私はまた…!!)


諦めて、たまるか…!!!」



こうなったら錬成しまくってやろうと手を合わせようとした時だった。





ドォン!!!


「え」



凄まじい音と共に、海賊達へと大砲が放たれた。まさか、この後に及んで海軍まで!?と海を振り返ると

黄色い潜水艦。



「トリシー!!!キャプテン!!無事か〜〜〜!?!」



「みんなっ…!!!」


キャスの大声が砂浜に響き渡った。



「なんだ!?海賊!?お前が呼んだのか!?女!!!」



「あぅ!?」


突撃の砲撃に驚いた船長は倒れている私の頭を足蹴にした。



「トリシー!!!受け取れ!!」



「ペンギン!!」


私が武器を持ってないのを知って、ペンギンが投げつけたのは沢山の様々な武器を入れた袋だった。
元軍人の私なら様々な武器を使えるとわかってのことだろう。



「武器を手に入れたからって、そんな体で今更何が出来るーーー!」


パシッ!
ドパパパパッ!!


「グァアア!!」


「ぎゃあぁっ!?なんだ!?その流れる様な撃ち方…!!」


「悪いけど、飛び道具さえあればこっちのもんよ」


「ヒューッ!!やるゥ!"流水弾丸(オクトバレット)"」


「変な名前つけないでよキャス」



足を撃たれ、殴られ満身創痍だったがそんな事を感じさせず、1人も命を奪うことなく、しかし外すことなく撃ち抜いていく。



カシュンッ!


「ん?」


「しめた!弾切れだ!今だ、てめえら!!」


チャンスと言わんばかりに一斉に私に近づいて来る海賊。


「まだまだ」


さっきまで撃っていた弾切れの銃、二丁をポイと砂浜へ捨てて袋から新しく果物ナイフをジャラッと取り出すと、近づいてくる敵目掛けて寸分狂わず投げつけていく。



「ギャァアアア!?」


「人間技じゃねえよ!能力者か!?」


「悪ィが、トリシーはただの人間だぜ」



ペンギンやベポと一緒になって敵を倒すキャスが、俺も人間技じゃねえと思うけど。というのでうるさい!とキャスの背後にいた敵をキャスの顔面ギリギリで最後のナイフを投げつけた。



「さぁ!ナイフも尽きたな!?どうする!?」



「いや…どうするって、ペンギーン!」


「ああ、ほらよ!どれでも好きなの使え!」


「またかよ!?!」


武器が無くなると途端に強気になる相手の船長に、懲りないなと思いつつもペンギンを呼べば、わかっていたかの様にいくつか武器を投げてくれた。







「チクショオーーーー!!!」



「あーぁ、ついにヤケクソね…」



ヤケクソになった相手の船長は残ったクルー数十人と共に、私に向かって突進してきた。



「全く、やめておけばいいのに…!?」


全員叩き伏せてやろうと薙刀を構えた時、ブワァッと勢いよく広がる薄い膜。
振り返ると刀を振りかざしたローが見えた。



「ロー…!!」



「"アンビュテート"!!」


「「ギャァアアア!!?」」


「死の、外科医…!?!」


私に向かって来ていた敵を全て吹っ飛ばしたローは、シャンブルズでちょうど私の近くにいたキャスと代わった。



「てめぇら…誰の女に手ェ出してやがる…」



「ロー…よかった、起きたんだね」


「あぁ、助かったぞ」


ぽすん、と頭ごと抱きしめられてホッと息を吐くと気が抜けたのか、カクンと倒れそうになったが想定していたのかローにそのまま抱き上げられる。



「遅くなって悪かったな、よく頑張った」



「!…へへ、まぁね」


「寝てていいぞ」


「…う、ん…」


よく頑張った、なんて言われたのは何十年振りだろうか。
長女であるからこそのその言葉の嬉しさを噛み締めて気を失った。



ごめんね、エド…
今だけ、だから…また起きたら

ちゃんとお姉さんになるから









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