シュウ+白竜


*グリフォン後

「…天馬達、行っちゃったね」
「…あぁ」
「白竜達も、もうすぐこの島を出ていくんでしょ?」
「…あぁ」
「じゃ、君達ともお別れだね」
「…シュウ、やはりお前も――」

白竜は懇願するかのようにシュウに問いかけるがシュウは白竜が言い終わらないうちに白竜の口にトンと指を当てた。

「言っただろ。僕はこの島を守らなくちゃいけない。…この島を、離れてはいけないんだよ」
「しかし…っ!!…俺はまだ、お前と一緒にサッカーが、したい…」

白竜は途切れ途切れに切なげに言った。
シュウはそんな白竜を一瞥すると小さく息を吐いた。

「…白竜。」
「?」
「白竜は、僕が何者であるか、気付いてない訳じゃないんだろう?」
「!!」

白竜の瞳が大きく揺れた。
シュウは穏やかに、小さな子供に言い聞かせるようにゆっくりと言った。

「気付かない訳ないよね。あれほど傍にいて、僕に触れて、化身まで合体させた。…君程の人間なら、違和感を感じたはずだ、気付いたはずだ。僕が――」

もう、この世の者ではない事に。

「―――、」
「だから僕は行けない。行けないんだ」
「…この島に伝わる伝承も、お前の事なのか」

シュウは悲しげに微笑むと白竜の問いに答えないで海の方へ目を向けた。

「白竜。僕はね、ずっとサッカーは人の価値を決めるものだと思っていた。…妹を守る事が出来なくて、原因となったサッカーを恨んだ事もあった。けど…」

「カイやチームの皆、それに白竜。君とするサッカーは楽しかったよ」
「―――っ、」

シュウは今までに見た事のない笑顔で笑った。
白竜は不覚にも泣きそうになり思わずシュウを抱きしめた。
そうでもしないとシュウが今にも消えてしまいそうで怖かったのだ。
シュウもゆっくりと白竜の背中に腕を回した。

「今までありがとう。短い間だったけど、君達と過ごす日々は楽しかったよ」

白竜からも小さく俺もだ、という声が聞こえた。
シュウはゆっくりと白竜から離れた。

「さ、もう行って。そして白竜、前に進んだら絶対に振り向いちゃダメだよ」
「…絶対にか」
「絶対。」

納得いかないようだったが白竜は漸く名残惜しそうにシュウから離れた。
そして一歩を踏み出した。

新たな始まりの一歩を。

だんだんと白竜とシュウの距離は遠ざかって行く。
しかし白竜は急に振り返った。

「はく…」
「…っ妹に!!…会えるといいな…」
白竜は泣きそうになりながら似合わない笑顔を浮かべた。
そしてまた白竜は走り出してついには姿が見えなくなった。

「…振り返っちゃ、ダメって言ったのに…」

シュウの頬に一筋の涙が零れた。
シュウは袖でその涙を拭き取ると目を閉じた。
その顔は清々しいものだった。

「ありがとう、そしてさよなら、白竜」

シュウは穏やかに微笑むと体が光りだしそして――


消えた。


(もう会うことはないだろうけど君達の事、ずっと遠いこの島で見守ってるよ)

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