さよなら、さよなら (復活・ツナ京)


ツナくんは、高校生になってぐんと身長が伸びた。
苦手にしていた勉強もいつの間にか出来るようになり、毎回のテストで上位に食い込む程。
ツナくんはリボーンくんのおかげだって言っていたけど、やっぱりツナくんが頑張ったからだと思う。
勉強も運動も出来るようになって、加えてあの優しい性格。
ツナくんを好きになる人が増えることも当然だった。

「隣のクラスの女子が沢田に告白したんだって」
「そう…なんだ」
「そうなんだって…アンタ、それでいいの?」
「………」

花が心配そうな顔をぐいっと近づける。
何故なら私もその1人だったから。
最初は私もツナくんを『只者ではない感じ』ってぐらいにしか見ていなかった。
だけど時折見せるあの大人びた表情にときめいていたのは事実で。
未来で命がけで私達を守ろうとしてくれる、ツナくんの優しさに触れる機会が増えてからはいつの間にか自然とツナくんを目で追う日が増えていった。
そうして私は少しずつ少しずつ、だけど確実にツナくんを好きになっていった。

「ボヤボヤしてると、取られちゃうよ?いいの?」
「……嫌」
「なら、ちゃんとアンタのその気持ち伝えなよ」
「でも……」

怖いのだ。
今までの関係が壊れてしまうことが。
私が黙っていると花は優しく頭を撫でてくれた。

「大丈夫よ、アンタなら。だから行っておいで。手遅れになる前にさ」
「花……うん、そうだよね。私、頑張ってみる」
「応援してるよ。……もっとも、アイツがアンタを振るなんてあり得ないけどね」
「え?」
「なんでもない。頑張りなよ」
「うん。ありがとう、花」

花に背中を押された私は、ツナくんに自分の気持ちを伝えることにした。
関係が壊れてしまうことは怖い。
それでもそれと同じくらい、ううん、それ以上にツナくんの隣に誰かが並ぶのは嫌だから。

ツナくんは放課後になるとある場所に行くのが日課になっていた。
だから私はHRが終わるとすぐに鞄を持った。

「京子!」
「!」
「アンタなら、絶対大丈夫よ」
「うん…ありがと」

出る直前に最後の一押しをしてもらうように花から応援の言葉を貰うと私は駆け出した。

駆け足で階段を登り屋上へと繋がる扉を開く。
するとやはりそこには既にツナくんの姿があった。
いつからか、ツナくんは放課後になるとよく屋上に行くが日課になっていた。
それは1人だったり、獄寺くん達と一緒だったり。
だけどする事はいつも一緒だった。
そして今日も、ツナくんは何をするでもなしに、ただただ、穏やかな表情で空を見つめるだけ。
私は一瞬怯みそうになる自分をどうにか叱咤して、ツナくんに声をかけた。

「ツナくん」
「あれ、京子ちゃん?」

私が来たことには気づかなかったようで、ツナくんは驚いた顔をした。

「やっぱりここに居た」
「へ?」
「ツナくん、最近よく放課後は屋上にいるみたいだからここかなって。ツナくんは屋上が好きなの?」
「好きっていうか…ここが一番よく見渡せるから」
「え?」

隣に並んだ私達から目線を外すと最初の時と同じようにツナくんは空を仰いだ。
それに倣い、私も顔をあげる。
そこには雲ひとつない、青く澄んだ空が果てしなく広がっていた。

「…空?」
「そう。俺のあるべき姿、大空が」
「大空…」
「ホラ、俺の周りってめちゃくちゃな人が多いからさ、そういう人達見ると俺がちゃんとしなきゃって思うんだよ。それでパニックになっちゃうこともあるけどこうやって空を見上げると落ち着くんだ」
「そっか…」

空を見上げたまま、ツナくんは穏やかに微笑んでいた。
あぁ、きっとツナくんを好きになった人はツナくんのこの表情に落ちたのだろう。
だって私もその1人だから。
まるで全てを受け止めて、そこにあるもの全てが愛しいと言うかのように、穏やかで、だけど強い意志を持ったこの瞳に、表情に。
私がツナくんに見惚れているとツナくんはあ、とこちらを向いた。

「それで京子ちゃんはどうしたの?」
「あ、うん。えっと…ツナくんに話があって」
「話?」
「うん…あのね、私…私…」

「ツナくんのことが、好きです」

ツナくんに向き合うと私はありったけの勇気と想いを乗せて言葉を紡いだ。
緊張からか、強く握りしめた手のひらが震えているのが自分でもよく分かる。
それでも、もうこの気持ちは止められない。後悔はしたくない。
ツナ君は一瞬驚いたように目を見開くとすぐにへにゃりと私の好きなあの笑顔を浮かべた。
そして私の手を優しく包むようにそっと両手で触る。

「うん……ありがとう」
「ツナ君…」

ツナ君の笑顔を見ただけで緊張が溶けていくのがよく分かる。
やっぱりツナ君って凄い。
だけどツナ君の口から続いた言葉は、

「応えてあげられなくて、ごめんね」

私の気持ちは受け取れないという、拒絶の言葉だった。
どんな結果になっても絶対に涙は流さない、そう決めていたのにいつの間にか私の頬には温かいものが伝っていた。
そして予想通りというか、そんな私の表情を見たツナ君はまるで自分が振られたように、傷ついた表情をした。

「ご、ごめんね。ツナ君。泣いたりなんかして」
「いや…」

私は慌てて涙を拭うけれど止まる気配は全くない。
ごめんね、花。
私、フられちゃった。
だけど本当はなんとなく、本当になんとなくだけどこうなるんじゃないかと思っていた。
だから怖かった。
言って、関係が壊れてしまうことが。
それでも微かな希望を自分で断ち切るなんて事はしたくなくて。
だけどそれでツナ君を困らせてしまっているのでは本末転倒だ。
決して、ツナ君にそんな表情をさせたかった訳じゃないのに。
私はどうにか涙を止めると静かに聞いた。

「好きな人…いるの?」

ツナくんは私の問いに答えることなく小さく微笑むとフェンスに凭れながら空を見上げた。

「俺さ、高校卒業したらイタリアに行くんだ」
「え…」
「そして、本当の意味でボンゴレを継ぐ。…中学の時に、9代目からの継承は済んでいるんだ。だけどせめて高校生までは日本で普通に暮らしたいって我儘言ったんだ」

本当は、皆にはこっちの世界でずっと暮らして欲しいんだけど叶わないから。

その言葉で、ツナくんは自分の我儘だって言ったけど本当は仲間のためだってことが私にも分かった。
だってツナくんはいつだって自分の事よりも皆の事を第一に考えてる人だから。
だからお兄ちゃんは最近更にボクシングに力を入れていたんだ。
山本くんは、甲子園に行くために努力してたんだ。
ツナくんの想いに応える為に、こちらの世界にお別れをする前に、ちゃんと、悔いの残らないようにするために。

「俺達は高校を卒業したらすぐにイタリアに行く。だから…もうすぐお別れだね」
「…っそんなの嫌だよ!」
「京子ちゃん…」

悲しそうに笑うツナくんの言葉に考えるよりも先に口が動いていた。

「だってそしたらもうツナくん達とは会えないんでしょ!?そんなの嫌だよ!お願いだから私も一緒に…」
「それは出来ない」
「!」

私の言葉に被せてツナくんは強い口調で言い切った。
その瞳と口調から絶対にツナくんは自分の意志を曲げないことが分かった。

「どうして…?」

縋るように聞くけれどツナくんの意志は少しも揺るがなかった。

「京子ちゃん。君は確かにこちら側の世界を知っている。だけどこちら側の世界の人間ではない。…分かるよね?」
「でも……!」
「戦えない京子ちゃんがこちら側に来るというならば覚悟しなければいけない。…こちらの世界から離れる覚悟。常に拘束される覚悟。そして…命を狙われる覚悟。…京子ちゃん。それが出来る?」
「……!」

未来でマフィアの恐ろしさは分かっているつもりだった。
だけど今度はきっと、その比じゃない。
だって、あの時は『死』なんて考えていなかった。
でもツナくん達はあの時から覚悟してたんだろう。
ううん、もしかしたらそれ以前から。
だけど大切なものを守るために死ねないと、強くなってきたのだろう。

じゃあ、私は?
私にはその覚悟が出来るの?

何か言おうと思って口を開くけどそれは言葉にならないまま空気に溶けていく。
ツナくんはそんな私の動揺を感じとったのか、優しく私の頭を撫でてくれた。

「戦えない京子ちゃんを守れるほど俺は強くない。唯でさえ京子ちゃんは了平さんの妹だってことで狙われる可能性が高いんだ。だけど日本に居てくれれば守れる。だから頼むよ。…母さんやハルと一緒に、日本に居て?」

最初はこちらが頼んでいたはずなのに、何故か今はツナくんに懇願されている。
だけどきっとツナくんは私の答えをもう分かっている。
だから私もツナくんの望み通りの言葉を述べる。

「うん…分かった」

だからお願い。
そんな瞳で見ないで。
こっちまで泣きそうになるから。

「ありがとう。そしてごめんね」

私こそ、弱くてごめんなさい。


先に屋上から降りると階段の所には花がいた。
私の表情を見ると花はすぐさまツナくんの所に行こうとしたので慌てて止めた。
どうして、と花が見つめるけれど私ただ緩く首を振るだけ。
すると花は何か言いたげに口を震わせつつもゆっくりと身体の力を抜いた。
そしてそのまま強く優しく私のことを抱きしめてくれた。
私はその優しさに甘えて涙が枯れるまで泣いた。
ツナくんへの想いを、忘れるかのように。

ーー私の初恋は、終わってしまったのだ。


季節はあっという間に過ぎ、私達は高校を卒業した。
そして今日はツナくん達がイタリアに渡る日。
私とハルちゃんは一緒に空港まで見送りに来ていた。

「やっぱり寂しいです〜」
「うん…ごめんね、ハル」

ハルちゃんが涙でぐしゃぐしゃになった顔のままツナくんに抱きつく。
いつもなら獄寺くんが止めるはずだけど今日ばかりは大目に見ているのか、歯ぎしりをしながらも傍観を努めている。
二人でツナくん達を笑顔で見送ろうと決めていたはずなのに、やはり涙は止められない。
ハルちゃんを宥めながらも自分の視界が滲んでいくのが分かった。

「ツナ、そろそろ時間だぞ」
「分かってる」

リボーンくんがツナくんに声をかける。
あぁ、時間が来てしまった。
ツナくんはゆっくりとハルちゃんを身体から離し、私達に向き合うと優しく微笑んだ。

「ありがとう。見送りに来てくれて。これからも元気でね」
「ツナさんこそ!」
「私達、ずっとここにいるからいつでも帰ってきてね」
「うん…ありがとう」
「ツナ」

再度リボーンくんから声がかかる。
ツナくんは困ったように苦笑するとリボーンくん達の方へと足を向けた。

「じゃ、行くね」
「ツナくん!」
「ツナさん!」
「?」
「「…いってらっしゃい」」
「!……いってきます」

最後の言葉は、笑顔かどうかはともかく、なんとか泣かずに言えた。
ツナくんはいつかの時のように弱く笑みを浮かべると仲間を連れてゲートへと歩いて行った。
決して振り返ることはなく。

「行っちゃったね…」
「はい…」
「…行こっか」
「…はい」

ツナくん達を見送った私達は自然と言葉が少なくなる。
だけどいつまでもここにいる訳にはいかない。
居ても、ツナくん達が戻ってくることはないのだから。
私とハルちゃんはツナくん達が歩いて行った方向とは逆の方向を向き、一歩足を踏み出した。
その時だった。

「京子ちゃん!」

行ってしまったと思った彼から大きく名前を呼ばれたのは。
振り向くとツナくんは何故か1人でこちらの方へ走ってくる。
今まで見たことない、真剣な顔つきで。

「どうしーーー…」

言葉を紡ごうとした途端、腕を勢いよく引っ張られた。

そして次の瞬間、キスをされた。

唇よりーー少しだけ、ほんの少しだけ外れた場所に。
それは一瞬の事だったはずなのに、何故かその時は永遠にも感じられた。
離れる瞬間、小さくゴメン、とツナくんが呟いたのが聞こえた。
そして名残り惜し気に中学の時よりも随分伸びた私の髪に空いている方の指をそっと絡める。

「ツナ…く…」
「さよなら、京子ちゃん」

私が言葉を紡ぐ前にツナくんは今までで一番優しい、だけどどこか泣きそうな笑顔を浮かべると私の腕を離し、元の道へと駆けて行った。

「京子ちゃん!」

ぺたんと腰が抜けてその場に座りこんでしまった私に慌ててハルちゃんが駆け寄る。
だけどハルちゃんの言葉は全く頭に入って来なかった。

「さよならって…どういう事…?」

私達が『いってらっしゃい』って言ったのは『ただいま』を聞くため。
ここがあなたの帰る場所だという事を示すため。
だけどツナくんは『さよなら』と言った。
つまりそれはもうここには帰らないという事。
彼の居場所は『ここ』じゃないという事。
だけどそれよりもどうして、

「どうして、キスなんかしたの…?」

ツナくんの唇が触れた所が熱い。
一瞬、夢じゃないかと思ったけどさっきの感触とこの熱さが嘘じゃないって教えてくれる。

「応えられないって言ったじゃない…」

閉じ込めたはずの想いが涙となって溢れてくる。
ツナくんの考えが分からず、私の頭はぐちゃぐちゃだった。

それからの事はよく覚えていない。
気が付くと私は自分の家の目の前に立っていた。
だけどこんな顔で家の中には入れない。
唯でさえお兄ちゃんが居なくなってお母さん達が悲しんでるんだから。
私はどうにか自分を奮いたたせる為に大きく深呼吸をすると扉に手をかけた。

「京子」
「!」

家の中に入ろうとした途端、後ろから声をかけられた。
振り返るとそこには花の姿があった。
私はドアから手を離して花のもとへ慌てて近寄った。

「どうしたの?お兄ちゃんならもう行っちゃったよ?」
「分かってるわよ。あの人とは昨日のうちにちゃんと挨拶したから。それよりもほら、アンタに届けもん」

お兄ちゃんと恋人である花も本当はお兄ちゃんの見送りに行きたかったらしいのだが私達と違って全てを隠されている花にマフィアとしての自分を見られたくなかったお兄ちゃんは昨日はずっと花の所へ行っていた。
実は別れてしまうのではないかと心配していたのだがその心配は杞憂だったらしい。
その証拠に、花の左手の薬指にはキラリと光る指輪が嵌めてあった。

「…良かった」
「何言ってんの?それよりほら、アイツから」

花の左手に注意が注いだままの私に花は顔にペシ、と何かを押し付けた。

「何?これ手紙ーー…」

封筒をひっくり返すとそこには少し不格好な、だけど彼らしい見慣れた字が書かれてあった。

『笹川京子様 沢田綱吉より』

「ツナ…くん」
「読んでやりなよ。アイツからの最後の言葉なんでしょ」

送り主の名前に自然と目が大きく開かれる。
当然だ。
さっきまで心を占めていた人物からなのだから。
花はそんな私の動揺を感じたのか、私の頭を一撫ですると読むように先を促した。
正直、この手紙を読むことは怖い。
閉じ込めたはずの想いが止まらなくなりそうで。
だけどきっと読まなかったら後悔する。
私は大きく深呼吸をすると封を切った。

『京子ちゃんへ
とりあえず、京子ちゃんがこれを読んでるって事はちゃんと黒川が渡してくれたんだね。京子ちゃんの事を泣かした俺の頼みだからもしかしたら、と思ってたから良かった。俺の代わりに黒川にお礼言っておいて。さて、ありきたりだけどきっと京子ちゃんがこれを読んでる頃には俺達はもう日本を離れていると思う。だから俺は、一つ告白しようと思う。ーー俺の事、好きだって言ってくれて嬉しかった。だって京子ちゃんはずっと俺の憧れだったから。可愛くて、明るくて、優しくて、強い心を持った君が。そんな君ともう2度と会えないなんて嫌だった。だから本当は君の事、連れて行きたかった。』

「ツナくん…」

『それでも、京子ちゃんを連れて行かないと言った事には後悔していない。連れて行かなかった後悔よりも、俺のせいで京子ちゃんが傷付く方が何倍も嫌だったから。君の事、本当に大切だったんだ。だからこそ、例え傷付けてしまったとしても守りたいと思った。勿論、これが俺のエゴだって分かってる。ーーだけどお願いだ。忘れてとは言わない。だけど思い出にして。幸せになって。俺は遠い地から君の幸せを祈ってる。ーー長くなってごめんね。それではお元気で。 沢田綱吉

P.S 俺も君の事、ずっと好きだったよ』

「ずるい…よ…ツナ…くん」
「京子…」

手紙を持つ手に思わず力が入る。
見慣れた文字に雫が落ちて滲んでいく。
最後の手紙だと分かっているからこそ大事にしたいと思っているのに涙が、想いが止まらない。
向かう先のない想いをぶつけるように花に思い切り抱きついた。
道中だというのにも関わらず、花は一瞬目を見開いただけでいつかのように優しく抱きしめ返してくれた。

ずるい、ずるいよツナくん。
どうして今更『好きだった』なんて言ったの。
そんな過去形で書かれた手紙なんていらなかった。
こんな風に想いを伝えるなら、残すなら連れていって欲しかった。傍に居させて欲しかった。
思い出にしたと思った想いが溢れてくる。
結局私は思い出にしたフリをして、あれからもずっと私はツナくんが好きだったんだという事が嫌でも思い知らされる。
その証拠にぎゅっと瞑った瞼の裏には今までのツナくんとの思い出が次々と浮かんだ。
なんて事ない毎日でさえ私にとってはキラキラ輝いていた。胸が熱くなる程大切だった。
だけど最後に浮かぶのはさっきの泣きそうな、だけど優しいツナくんのあの笑顔。
あの笑顔が今までで一番愛しく思えた。

「私だって…大好きだったよ…っ!」

そしてきっと、これからも。

思い出になんて、出来るのだろうか。
身体中を駆け巡るこの愛しさを、痛みを、思い出に出来る日なんて来るのだろうか。

「桜だ…」

頭上から降ってきた花の言葉に顔をあげると目の前には桜吹雪が舞っていた。

ーーもうすぐ、ツナくんと出会った季節がやってくる

きっと、この先私は何を見てもツナくんのことを思い出すんだろう。
もしかしたらこうして私は少しずつツナくんを思い出にするのかもしれない。

だけどきっと今すぐには無理だから。
私はこれからもツナくんに恋をし続ける。
思い出に出来るまで。

「大好きだよ、ツナくん」

だからもうちょっとだけ、好きでいさせてね。



「皆ゴメン。行こうか」
「…もういいのか」
「うん」
「オイ、何で唇にしなかったんだ?」
「げ、お前見てたの」
「見てたんじゃねえ。見えたんだ」
「あっそ…」
「で、何でだ?」
「…大切な人を泣かせるヤツに、唇へキスする資格なんてないよ。ファーストキスだったら悪いしね」
「そのせいでまた泣かせたら世話ないけどな」
「う…それはまぁ…気が付いたらしてたって言うか…」
「今ならまだ、間に合うぞ」
「!」
「どうする」
「…いいんだよ。もう決めたから。でもそうだな…いつかボンゴレを壊して、誰も傷付かないような日々を送れるようになったら会いに行こうかな」
「それじゃ何年かかるかわかんないな」
「死ぬ気でやるさ。そのために俺はボスになったんだから」
「…そうだったな」
「うん。…それじゃ、行こうか」

『大切なものを守る戦いへ』

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
さよなら、さよなら
(大好きな人)
Title by 『秋桜』

- 18 -
[prev] | [next]


back
TOP

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -