三年生組


*ドラマCDネタ
*雷門、月山エスカレーター式設定。一応選抜テストあり。

「そういえば南沢、どうして遅れたんだ?お前時間には人一倍厳しいじゃないか」
「あ?」

南沢を駅まで送る途中、ふと三国が南沢に訊ねた。

「別に遅れるつもりなんかなかったさ。むしろ早く着き過ぎる予定だった」
「南沢…そんなに俺達の事、」
「ただ単に電車がなかっただけだ。月山は山ん中にあるからな。早く着き過ぎるか、遅れるかの二択だったんだよ。だから早めに着く予定だったってのに…」

『じゃあ俺、ちょっと雷門に行ってくる。明日には帰ってくるから』
『うむ。気をつけてな』
『あぁ』
『南沢!』
『ん?…なんだお前らか、どうした皆揃って。見送りか?』
『お主、また雷門に行くというのは真か!?しかも今回は遊びに行くと聞いたぞ!?』
『遊びって…まぁそうか』
『ならん!』
『は?』
『お主は月山の者だ!そう度々雷門に帰る事など許さん!』
『何寂しがってんだよ…すぐ帰るっての…だからこの手を離せ電車に遅れる』
『断る!そう頻繁に帰っては里心がついて戻ってこなくなるかもしれん!』
『何訳の分からない事言ってんだよ…ちゃんと帰ってくるから離せって』
『嫌じゃー!』

「…という茶番に付き合ってて結局電車一本遅れたんだよ」
「そ、それは大変だったな…」

南沢は事の顛末を呆れ半分の口調で語った。
三国達にとっては南沢がそこまで月山の皆に慕われているのが意外だったのか、皆戸惑った表情をしていた。

「まぁ適当に土産でも買ってけばアイツらも大人しくなるだろ」
「そうか…」

そこでプツリと会話が途切れ、沈黙が生まれ、三国達の間に一瞬の風が吹き抜けた。

「伝承の儀、か…俺達もそろそろ卒業だな…」
「俺はやっぱり最後まで一緒に南沢とサッカーやりたかったド」
「悪い…」

天城の拗ねたような、少し責めるような口調に南沢は眉を下げた。

「でも南沢だって高校でもサッカー続けるだろ?そのうちまたサッカー出来るって。…だから南沢!また全国大会で会おうな!」
「そりゃ無理だな」
「え、」

三国が南沢に笑いかけたが南沢は三国の言葉を一蹴した。

「なんでだよ南沢!サッカー止めるのか!?」
「な訳ないだろ。…同じ県内の学校行くんだ。全国でなんて戦える訳ないだろ」
「「「え」」」

車田が南沢に掴みかかったが南沢の言葉で三人の目が点になった。

「南沢…もしかしてこっち戻ってくるのか?」
「当たり前だろ。行きたい高校はこっちにある。そこに行くために内申気にしてたんだよ。…だから会うとしたら県大会だ。まぁもっとも、同じ県内なんだから練習試合とかもあるだろうがな」
「南沢…」
「南沢ー!」
「うわっ!」

南沢の言葉に感動してか、いつかのように天城と車田が南沢に飛び掛かった。
押し潰されて南沢の呻く声が聞こえたが他の者達は皆、互いに顔を見合せて笑うばかりで誰も助けようとはしなかった。


さぁ。そろそろ受験に本腰を入れなければ。


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