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「あーもー…フェイに会いたい!」

未来から戻り、普通の日常へと戻った天馬はある日の部活終了後、唐突に叫んだ。

「うるさいぞ天馬」
「だってついこないだまで居たんだよ!?なのにもう会えないだなんて…信助はわかるよね!?」
「わかるよー。わかるからこそ言わなかったのにー…天馬のせいで思いだしちゃったじゃないかー」
「ご、ごめん…」

信助が涙目になったのを見て剣城はそっと信助の頭を撫でた。

「天馬。フェイが居なくて寂しいのはわかる。だがフェイが未来から来ていた以上別れがある事はわかっていただろう」
「そうだけど〜」

天馬も頭ではわかっているのだろう。
天馬も涙目になりながら剣城を見ていた。
剣城は仕方なくため息を吐きながら空いている方の手で天馬の頭を撫でた。

「…なぁあれ、TMキャラバンじゃないか?」
「「「え?」」」

ふと神童が空を見上げると少し前まで自分達が乗っていたキャラバンが浮かんでいた。

「『サッカーは必要だ。』…この言葉は君の言葉だ。そうだろ、天馬」

キャラバンがゆっくりとグランドに降りてき、開いたドアから聞こえてきたのは忘れるはずのない、大切な仲間の声だった。

「フェ…イ?」
「久しぶりだね、天馬」

降りてきた人物はフェイだった。

「〜〜っフェーイ!……て、アレ?」

久しぶりに会えた嬉しさにいつものようにフェイに抱き着こうとした天馬と信助だったが途中で違和感に気が付いた。

「あはは、天馬も信助も皆ちっちゃいなぁ〜」
「というか…フェイ、もしかして…」

天馬達は改めてフェイを見た。
すると実はフェイの顔が最後に会った時よりも大人びている事、声が低くなっている事、身長がだいぶ伸びている事に気が付いた。

「…うん、今の僕は天馬達と最後に会ってから10年後、つまり今から210年後の未来からやってきた。…大人になれたんだよ、天馬!」

そう笑うフェイの顔はあの頃と変わらない、少し幼さの残る笑顔だった。

「…本当に?」
「うん」
「〜〜っ、良かったー!!」

天馬達は今度こそフェイに抱き着いた。

大人になる。
それは生きていくうえで当たり前の事。
だけどそれがフェイ達セカンドステージチルドレンには許されなかった。
しかしもうそんな事はないのだ。

「他の皆はどうしてるんだ?」
「ギリスとメイアは結婚したよ。20歳になった時にね。サルは皇帝気質が抜けなくて今はエルドラドの幹部にいるんだ。今度は真っ当な方法で世界を変えるって」
「…皆元気なんだな」
「うん!あ、でも一番元気なのは――」
「ちょっとフェイ〜、フェイばっかり皆と話しててズルいやんね!」
「え…」

キャラバンからもう1人、女性の声が聞こえてきた。
しかしその声の持ち主はフェイ以上にこの場に居るはずのない人物。
だって『彼女』は、

「ふふっ、なあに、皆そんなに驚いた顔しちゃって。それとももう、こんなおばさんになったうちの事なんてわからない?」
「だって君は…」

キャラバンから出てきた女性は40代ぐらい。
しかしそれを感じさせない程に若々しいオーラを身に纏っていた。

「久しぶりやんね、皆!30年ぶりぐらい?」
「黄名子…ううん、お母さん、凄いんだよ!本当に未来を変えたんだ!」
「「「えぇ!?」」」
「可愛い息子の為だもん。頑張るのは当たり前やんね」

そこに居るのはフェイを守ろうとがむしゃらに焦っていた女の子ではない。
母性に満ち溢れた、『母親』だった。

「凄い…凄いよフェイ!黄名子!」
天馬はただただ、そう繰り返すしかなかった。

「ねぇ天馬、大人になるって、素敵な事なんだね!」

そう笑う青年はもう嘗ての未来を諦めていた少年ではない。
未来に沢山の希望を持っている青年だった。


(未来を諦めない)

(それはきっと、どんな事よりも素敵な事)

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