首筋を這う舌は燃えるように
熱く、腰を抱く手は凍えるよ
うに冷たかった

「キヨカ、」

その両端な温度差に、耳元で
聞こえる低い声に、眩暈を覚
え、私は貴方の腕の中でただ
ただ身悶える




「マルコ隊長、」



ぽつり、呟くもその声は蚊の
鳴くようなか細い声で、私の
胸元に顔を埋める貴方に届い
たのかは、ついに分からなか
った。


目を覚ますと、見慣れた自室
の天井が見えた。けれども隣
に感じた体温は、いつも見慣
れぬものだった。
寝返りを打つと、こちらを向
き私の腰に腕を回したまま寝
息をたてるマルコ隊長と向き
合う形になる。

長い睫毛、整った鼻筋、目尻
にある笑い皺
全て、愛しくて涙が出た。

愛しくても、どれだけ焦がれ
ても、手に入らないものがあ
るのだという事を私はこの人
に教えられた。



「好きなんです、」

頬を赤らめ、控えめにその気
持ちを伝えたのはいつの頃だ
ったか。その頃の私はまだ少
女で、いつかマルコ隊長も私
を見てくれると、そんな根拠
のない希望を胸に抱いていた


「そうかい、」

マルコ隊長の返事はたったそ
れだけ、肯定も否定もしない
、それだけ。


マルコ隊長が夜、私の部屋に
来るようになったのはいつの
頃だったか。たまにふらりと
私の部屋に来ては共に一夜を
過ごし、そして翌朝にはもう
いない。「愛してる」や「好
きだ」なんて言葉、一度も聞
いたことは無い。私の部屋へ
来るのはその行為のためなの
だと、いつからか頭では分か
っていた。

海を、自由を、愛する男。
いくら体を重ねても、いくら
共に朝を迎えても、縮まる事
なき貴方との心の距離。


(いつかは、いつかは…)


私を想ってくれる。そう信じ
てマルコ隊長を受け入れてき
た私。その“いつか”はいつ
まで経っても訪れぬまま、い
つだって無情に夜は明けた。



「マルコ隊長、私、もう疲れ
ちゃいました、」





都合のいい夜が明ける

腰に回されたマルコ隊長の腕
を優しくベッドへと降ろすと
、散らかった衣服を拾い集め
身につけて、今日はマルコ隊
長よりも早く部屋を後にした

涙と共に、マルコ隊長への気
持ちもその場に置き去りに、


東の空の方が白んできて、
もうすぐきっと夜は明ける。

マルコ隊長にとっても私にと
っても、今日の夜明けは素晴
らしい夜明けになるに違いな
いの


「愛してました、心から」





20101109
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企画サイト「FAKE×FAKE」さま提出

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