突如体験した事もない衝撃に襲われた。

なんだこれ。力が全く入らないや。


目の前がぐにゃりと歪み、わたしの体は重
力に逆らう事を忘れバタンと大袈裟な音を
立て床に叩きつけられた。


「キヨカ!!!?」


遠くから響くペンギンの声。
いきなりの衝撃に、何が起きたのか理解出
来ずにいたが自分の体をまさぐってみて、
自分の体を銃弾が撃ち抜いている事に気付
き”ああ、成る程な”と妙に落ち着き納得し
ている自分に気付く。そしてその銃弾はど
うやら私の左胸を貫通しているらしい。

ああこのままわたしは死ぬのか。



「てめぇ、何者だ!!?」

「おい!誰か早くキャプテン呼べっ!!」


「キヨカ!キヨカ!おい、しっかりしろ
っ!」



眠たくなってきて、ぐらぐらする。そんな
ウトウトするわたしの頭上はとても騒がし
かった。ああ、この会話から読み取るに海
賊狩りの野郎が船内に潜んでいたんだろう
んで、そいつが甲板の上でベポ達と遊びな
がら油断してへらへらしてたわたしの背後
から銃弾を浴びせた。そんなとこか。
このハートの海賊団に潜んで海賊を狩ろう
なんざ、とんだ世間知らずの馬鹿か死にた
がりな野郎だな。あ、ほら。ベポの一撃で
あっけなく泡吹いて倒れやがった。
けっ、早くキャプテンにバラされて海王類
のエサにでもされちまえ。

そんな風に思案している間にもわたしの体
内の血はドクドクと体外に出ていっている
みたいで、撃ち抜かれた心臓ももうよく機
能してないみたい。



「キヨカ!!!」



あ、キャプテンの声。もうあんまり見えな
くなってきていた目を必死にこじ開けわた
しを抱え上げたキャプテンの顔を見上げる
ああ、死ぬのならキャプテンの顔を見なが
らって何となくだけど決めてたから、それ
が叶ってわたしは嬉しいよ。


「キャ、プテ、」

「馬鹿野郎、キヨカ!なんで、こんな」

「ごめ、ん」


あー、こんな相手の殺気にも気付かなかっ
たなんてわたし本当に馬鹿野郎だ。もっと
美味しいもの食べたかった。もっと可愛い
服着たかった。もっと綺麗な景色見たかっ
た。もっとみんなと冒険したかった。

もっとキャプテンに愛されたかった。



「キャプテン!早く、早くキヨカオペ室
へ運ぼうよ!!おれ、運ぶよ!!」

「キャプテン!!」

ベポの涙声が聞こえる。キャスケットの悲
痛な声が響く。ありがとう。みんなありが
とう。
でもね、わたし助からないって分かってる
よ。だって私の心臓もうほとんど動いてな
いもん。外科医のキャプテンも分かってる
からこそ、わたしを抱えたまま動かないん
だよ。



「キャプ、テ..すき..」

「黙れ」

「す、き、」

「黙れ」

「す...き、」

「黙れっ、っ」

「すき」



黙れって言われたって、もう死んじゃうん
だから言いたい事は言わせて頂くよ。好き
なの、キャプテン。大好き。もしもこの世
界がひっくり返ろうが、この海が枯れ果て
ようが、わたしが死んでしまおうが、

そう、死んでもすきよ



「す


わたしの言葉が遮られたのは、キャプテン
がわたしにキスをしてくれたから。そして
それと同時にわたしが事切れたから。

笑顔のまま見開かれたわたしの目には、似
合わない涙を目いっぱいに溜めて涙を流す
キャプテンとあおい綺麗な空が映ってた。






あおく あわく さようなら




あおくて、弱くて、ごめんなさい。

そして限りない沢山のありがとう。






title 失青 2014.12.20

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