幼い頃、マルコに聞いた事がある。

「マルコの幸せって何?」

それはまだマルコが私のご近所さんで、仲
の良い幼馴染みねって、早く付き合っちゃ
えばいいのにねって、ご近所のおばちゃん
達にもよくからかわれていた思春期の頃。

二人でよく散歩に来ていた海のよく見える
丘の上で、不意に聞いてみた。


「この広い海の上で自由に生きていく事だ
よい」

間髪入れずに返ってきた返事。マルコの目
には、私達の目の前に広がる青い青い海が
果てなく映っていて、その目はこれからの
彼の希望に満ちた夢と冒険が限りなく映っ
ていた。

そのエメラルドの様な綺麗な瞳の中には私
が映り込む隙間なんて、1mmも無かったの











あなたの幸せを思えるほど
綺麗な恋じゃない




「で、キヨカの幸せは何だい?」

「マルコとずっと一緒にいる事」
「お金持ちと結婚して幸せになる事」

「やっぱりバカだねぇ、ロマンの欠片もね
ぇのかい」

「ロマンなんていくらで売れるのよ」

「ま、お前らしいよい」


そう言って笑ったマルコは、いつものよう
にそこで寝そべって昼寝を始めたから、私
もいつものようにマルコの隣に寝そべるの
だって本音なんて言ったって、私の幸せは
一生叶いっこないんだもの。
いじけてそう思いながら、眠りに落ちたマ
ルコの唇に己の唇を優しく重ねた。その不
器用な不器用なファーストキスは全然レモ
ンの味なんてしなかったから、悔しくて涙
が溢れたのを今でも覚えてる。

それから数年後、私の幼馴染みマルコは広
い広い海へと冒険の旅に出たの。
彼自身の幸せを叶える為に。




「マルコ、あなたあの時本当は起きてたん
でしょ?」

今なら確信が持ててそう聞けるのに肝心な
あなたはいつも手配書の中。あなたは幸せ
を叶えて、この海で自由に生きているのね
そんなの私はちっとも面白くない、そう感
じながらもあなたの活躍を、白ひげ海賊団
の活躍を心待ちにしている私はもうすっか
りおばちゃんよ。

もしあの時、本音を口にしていたら、何か
変わっていたんだろうか。そんな答えの分
かりきった疑問を胸に抱きながら、今日も
私は丘の上で一人、お昼寝をするの。








(まだ、幸せを諦めきれない私をあなたは
笑い飛ばしてくれますか?)






title 失青 2014.12.11

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