窓からそよそよとそよぐ心地よい風
ツンと鼻をつく薬草の香り。ごりご
りと薬草を調合するチョッパーの作
業音。

あたしは目を覚ました。

「…チョッパーあたし、いつから寝
ちゃってた?」

掠れた声で尋ねると、チョッパーは"
もう起きたのか"とため息混じりにつ
ぶやき振り返った。

「まだ30分も寝てないぞ。
キヨカお前この3日ろくに寝てない
んだ、ちゃんと寝ないとお前こそ体
調壊しちまうぞ?」

「ん、」

「ルフィはおれが診てるし、ルフィ
が起きたらキヨカも起こしてやるか
らさ、お前も寝ろよ?」

「うん、ありがとチョッパー」



まであたしが伏せてうたた寝してい
たベッドの上には、全身を包帯でぐ
るぐる巻きにした我らがキャプテン
がいて、彼はこの3日間眠りっぱな
し。
3日前のあの激闘が嘘のようにのど
かな時間が流れるこの部屋。だけど
全身ケガだらけのルフィを見てると
いたたまれない気持ちになって、心
配でたまらなくて、あたしはルフィ
からひと時も目を離せないでいる
(きっとというか絶対、ルフィはそ
んな事望んでないんだけど)


「チョッパー、ありがとうね」

もう一度チョッパーにお礼を言うと
彼は"嬉しくなんかねぇよバカヤロー
!"等の暴言を吐きながらくねくねと
嬉しそうに踊ってた。そのチョッパ
ーが薬草を取りに行くと言い、部屋
を出て行くのを確認すると、あたし
はルフィの包帯だらけの右手をそっ
と握る。(何だかこんなとこ見られ
るのは恥ずかしいから)

微かに血の滲んだ包帯
ごつごつとした指
柔らかい手の平

全てが温かくて、ルフィの体温を感
じることが出来て、愛しくて、でも
心配で、胸が締め付けられて、思わ
ずルフィの手を握る手に力がこもる



握り返された、

そう感じたと同時にゆっくりと開か
れた薄いまぶた。まぶしそうに目を
開け顔をしかめるキャプテンに、あ
たしは優しく爽やかにご挨拶しなく
ては、


おはようキャプテン、
ご機嫌いかが?

「にしし、腹減った」

「言うと思った。チョッパーに知ら
せて来る、あとサンジ君にご飯の用
意頼んでくるね」

しししと笑いながらしっかりとあた
しの手を握り返すルフィに、にこり
と微笑むとあたしはそっと手を離し
ルフィの元から離れる

離れるはずだったのに、離れられな
いのはルフィがしっかりとあたしの
腕をつかんだから、


「キヨカ、何で泣いてんだ?」


"嬉し泣き"

そう素直に答えたらルフィへの想い
が溢れ出して止まんなくなりそうだ
から、あたしは唇を噛み締めてただ
立ちすくむしかないの

(だから早く立ち去りたかったのに、)

20120523

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -