目を閉じればいつでも浮かんでく
るそばかすのある明朗な笑顔、エ
ースはいつでもどんな時もあたし
のまぶたの裏にいるの

そうあたし自身に言い聞かせなが
ら幾日をこの船の上で過ごしてき
たのだろうか、

あたしはその月日をひとつひとつ
思い返しながら主のいなくなった
二番隊隊長の部屋の扉を開ける



お世辞にも広いとは言えない部屋、
(そりゃ海賊船の一人部屋だもの)

きれいとも言えない部屋、
(エースの部屋の使い方が悪いの)

散らかった部屋、
(エースは整理整頓が苦手)

日当たりのいい小窓のついた部屋、
(この窓からの木漏れ日を浴びながら
昼寝をするのがエースの日課だった
から)

壁にアザラシの顔の様に見える可
愛い木目のある部屋、
(これを見つけたのはあたし、見つ
けた途端二人で爆笑したけど)

冬島に停泊中の寒い日にそれを理
由にしてはじめて抱きしめてくれ
た部屋、
(意外に照れ屋なエースの下手くそ
な口実)

自分の気持ちが分からずに泣きじ
ゃくるあたしに不意打ちでキスし
てくれた部屋、
(驚きと恥ずかしさで涙も止まった
の)

始めて男の人と一緒に朝を迎えた
部屋、
(一晩中大切に抱きしめ続けてくれ
たエースにひそかに永遠の愛を誓っ
た)


エースとあたしの思い出のたくさ
ん詰まった大切で大好きな部屋

居心地のいい部屋のはずなのに主
が留守のこの部屋はあたし一人じ
ゃ広すぎて居心地が悪いの

ベッドにダイブし、シーツに顔を
埋めて


あなたの残り香を捜す

『待ってろ、キヨカ。ティーチ取
っ捕まえてすぐに帰って来るから、
お前はこの船で、この部屋でおれの
帰りを待ってろ』

ニヤリ、笑いながら自信たっぷり
にそう言ってあたしを船に残して
行ったクセに、
(公開処刑って一体なんなのよ)

ばか、ばか

ばかエース、誰が待っててなんか
やるもんか

もうこの白髭海賊団の船はインペ
ルダウンに向かってんだからね、
エースを迎えに


だから、だからどうか生きていて
(あたしの存在価値は、エースの中
以外には見出だせないよ)


必ず助けて抱きしめるから、

20120327

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