大丈夫、きっと大丈夫


そう自分に言い聞かせて
ガクガクと震える膝を、
肩を抱き私はまた武器を
手にする

こんな奴らに殺されるほど
私も、この村も弱くないも
の。それなのにどうして村
のみんなは倒れていくの、
死んでいくの?

誰かの泣き叫ぶ声が、断末
魔が耳から離れない。火薬
と煙、そして血の臭いの混
じった特有の臭いが鼻をつ
く。
仲良くしていた村のみんな
が血を流し事切れていく光
景が目の前に広がる、その
光景はまさに地獄


「ちっぽけな村の、クズみて
ぇなお前らが俺達海賊にたて
つこうなんつう考えを起こし
たのがそもそもの間違いだっ
たな」


幾度となく殴られ、体内から
逆流してきた血液が気管に詰
まって息がうまく吸えない、
脚や腕に当たった銃の弾がズ
キンズキンとうずき、血がと
めどなく流れ出ていくのが分
かる
このまま、こいつらに私達の
この村を奪われるのだと思っ
たら悔しくて悔しくて涙が止
まらない


「しかし気の強えェバカ女だな
もうちょっとしおらしくして
たら殺さず可愛いがってやっ
たんだがな」


海賊の頭と思われる男が私の
あごを掴み上げゲラゲラと下
品な笑い声をあげる。そんな
汚い手で触るな、この村のみ
んなを触るな


「あんたらみたいな奴らに可愛
いがられるくらいなら死んだ方
が100倍マシだ、このカス野郎
共」


そう言って頭と思われるカス野
郎の顔に血の混じった唾をはき
つけてやった、嫌悪感に歪んた
カス野郎の顔が少しだけ小気味
よくて、最後の力を振り絞り私
は笑った。


カチャリ、

怒りトチ狂ったカス野郎が私の
こめかみに銃口を当てた、死ぬ
覚悟なんて、武器を手に取った
時から既に出来ていた。怖くな
い、なんて言っちゃ嘘になるけ
ど村のために闘って死ぬのなら
本望だ、こんチクショウ


ドォーンという鈍い轟音が頭の
中で響いて、私は死んだのだと
思った。

けれどなぜか痛みはなくて、"死
ってこんなあっけないものなん
だ"なんて考えてたら頭じゃなく
て全身への衝撃、そして砂埃。
恐る恐る目を開けると、目の前
にいたカス野郎が倒れてて、そ
いつと私を隔てるように立つの
は麦わら帽子をかぶった黒髪の
男だった。



「おい、お前よく言った。こい
つはお前の代わりにおれがぶ
っ飛ばしてやる」



そう言って彼は拳をパキパキ
と鳴らしながらニッと笑った





HERO

麦わら帽子をかぶった手足の伸
びるおかしなHEROは、本当
はとんでもなく強い海賊だった
なんてその時私は知らなかった


彼が私の代わりにカス野郎を殴
り倒すのを見ていたら仲間の死
だとか、悔しさだとか、死から
逃れられた安心感だとか、いろ
んな感情がぐちゃぐちゃに混じ
って涙が止まらなくなった。


(ありがとう、そう心の中で何度
も何度も叫び続けてた)
20120315

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