ねぇ、やっぱり海賊は必ず
しも水葬されなきゃいけな
いのかしら?あたし嫌だな
ねぇエース、あたしが死ん
だらエースの炎で火葬して
絶対よ、お願い。じゃない
と毎晩エースの枕元に化け
て出てやるからね、

そう言いながら、えへへと
悪戯っぽい笑みを浮かべる
のはおれの愛する女で、こ
いつは日に日に痩せこけて
いく。

「ばか、」

そう言って頭を撫でてやる
と、こいつは猫みたく気持
ちよさそうに目を細めた。
愛おしい、と心の底からそ
う思った。

こいつの身体が病魔に蝕ま
れてると気付いたときには
もう全てが手遅れだった。
もってあと半年、船医にそ
う告げられたとき信じられ
なくて、訳分かんなくて船
医に掴み掛かったおれを制
止したのは、自分の命の期
限を宣告されたばかりの
キヨカの凛とした美しい横
顔だった。


「あれからもう8ヶ月よ、
エース。あたし頑張ったで
しょ?」


ふふっと笑いながら優しい
視線をおれに向けるキヨカ
いちばんつらいのは、苦し
いのはおめぇのはずなのに
おれやクルー達の前ではい
つも穏やかな笑みを浮かべ
ていて、病魔なんて本当は
嘘なんじゃないかって、本
当は元気なんじゃないかっ
て、そんな願望にも近い気
持ちをおれ達白ひげ海賊団
みんなが持っていた。


「ああ、すげぇ頑張った。
すげぇよ、キヨカ…っ」


でも日が経つにつれ、食が
細くなり、次第になにも食
えなくなって、今やベッド
から起き上がれなくなった
キヨカ。細くなっていく腕
こけていく頬、青白くなっ
ていく顔色、それを隠そう
と、いつもナースに頼んで
頬紅を塗ってもらっている
キヨカ。クルー達に心配を
かけまいとしている健気な
キヨカ。いま、この時もお
れに穏やかな笑みを向けて
くれてるキヨカ。
どんなキヨカだって全部、
キヨカの全部。おれは失い
たくねぇんだよ




「…エース、泣かないで?」

ぽろぽろ、ぽろぽろとガキ
みてぇに涙をこぼすおれに
キヨカの細い腕が伸びてき
て、優しい指先で涙をすく
う。

「エース、ね、ちゅうは?」

冗談めかしつつ笑いながら、
そう言うキヨカの唇に自分
の唇をあてがう。柔らかく
て、生暖かくて、キヨカの
生が唇から直に伝わってき
て余計に泣けた。
キヨカに負担がかからぬよ
うに優しく抱きしめると、
キヨカの頼りない心音が聞
こえてきて、おれはキヨカ
の右首筋に顔を埋め、また
泣いた。


「…ェ、ス、…あたし、ね






















あなたの一部になりたかった」



そうつぶやき、穏やかに眠
りについたキヨカにおれは
もう一度だけ口づけた。

キヨカをおれの体温で溶か
して、火葬しよう。そした
らおめぇはおれの一部にな
れるだろ
20101029 title by3gramme.  

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