「冗談はよしてくれよい」


マルコ隊長は自らの手に抱
えた書物から目を逸らすこ
ともせず、あたしの目も見
もせずそう言った。その声
色はとてもとても冷たいも
ので、一瞬であたしの一言
を跳ね退けてしまった。マ
ルコ隊長ならあたしがこん
なこと冗談で言えるはずが
ないって、分かってるでし
ょ?

「マルコ隊長大好きです」

マルコ隊長の言葉を無視し
て、もう一度同じことを言
ってみた。しかしマルコ隊
長は視線を書物へと向けた
まま、パラリとページをめ
くった。あたしの言葉はど
こへも行けず、ただ居心地
の悪いこの空間をふわふわ
と漂っていた。


「マルコ隊長大「キヨカ、
もう部屋へ帰れよい」

まるで壊れたロボットのよ
うに繰り返すと、途中で遮
られ最後まで言わせてはも
らえなかった。マルコ隊長
は、あたしを拒絶した。完
全に。マルコ隊長の部屋の
小窓から微かに見える月は
、きれいなきれいな三日月
で、まるでこんなあたしを
嘲笑うかのように美しく輝
いていた。相変わらずマル
コ隊長は書物を見つめたま
ま、あたしのことなんて見
もしなかった。最初からあ
たしは彼の眼中にすらいな
かったの。




大好きだと嘘を吐いたと
嘘を吐いた



去り際に「嘘に決まってる
じゃないですか」と笑いか
ければ、マルコ隊長も「悪
趣味な冗談はやめておけよ
い」と言ってあたしを見て
笑ってくれた。ああ、これ
でいいのか。

元々あたしなんて眼中にな
くって、本当の事を言って
拒絶されるより、見え透い
た嘘をついてでも笑いかけ
てほしかった。こんなあた
しは本当に臆病者で、弱虫
で、情けなくってマルコ隊
長には不釣り合いな女ね。
本当、馬鹿みたいで泣けて
くる。

(傷つかないための最低な最善策)

20101012 title by3gramme.

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