夏島が近いのだろう
あたしの背中にはじんわり
と汗がにじみはじめていて
Tシャツが背中にはりつい
てしまうのも時間の問題だ
と思う、暑い。
今日の3時のおやつはアイ
スがいいな。あ、でも船で
アイス作るなんて無理かな

「なに一人でぶつぶつガキ
みてぇなこと言ってんだい」

声の方を見上げるとパイナ
ップル、否マルコ隊長が眠
たげな目であたしを見てい
た。

「あれ?声に出てました?」

「末期症状だな」

「きっと次の島はマルコ隊
長にお似合いな島ですね」

「…自分の上司に向かって
パイナップルとでも言いて
ぇのかい?」

やっぱりあたしよりマルコ
隊長の方が一枚上手らしい
「あら?また声に出てまし
た?」「お前の考えてそう
なことはだいたい分かるよ
い」呆れたように少しだけ
ため息を吐いたマルコ隊長
はあたしの隣に腰をおろす
「報告書、終わりました?
」「今オヤジに出してきた
とこだよい」マルコ隊長は
仕事がひと段落ついたら必
ずあたしの横に来てくれる
気がする

「ふふっ」 

「なんだい急に一人で笑い
だすなんて気持ちわりい」

「いや、わたし気に入られ
てるなって思って」

「………そういうことは思
っても口に出すんじゃねぇ
よい」

あたしの考えていることが
分かったのか、マルコ隊長
はプイと視線をそらすと、
ぶっきらぼうにそう言った
ちょっとだけ顔が赤い気が
するのは、暑さのせいって
ことにしてあげておこう。

「うれしいんです。あたし
もマルコ隊長のこと好きだ
から」

「まるでおれがお前のこと
好きみてぇな言い方だな、」

「あれ?違うんですか?」

「お前はポジティブなのか
ばかなのかわかんねぇよい」

「ふふっポジティブなんで
す」

船尾の方がなにやら騒がし
い。この暑さに耐えきれず
クルーの誰かが海に飛び込
んだのだろう。全く海賊っ
てのは本当に自由な人たち
だと感心してしまうくらい
だ。船尾から聞こえてくる
笑い声が本当に楽しそうで
こちらまで楽しくなってし
まうからあら不思議。

「マルコ隊長、誰か飛び込
んだみたいですよ」

「おれにはマネできない涼
み方だよい」

「ふふっ確かに。ねぇ、マ
ルコ隊長見に行きましょう
よ?」


そう言って立ちあがってマ
ルコ隊長の腕をひっぱる。
「しょうがねよい」そう言
って渋々あたしについて船
尾まできてくれるって、な
んの疑いもなく思ってたも
んだから、逆に腕を引きこ
まれてマルコ隊長の腕の中
にすっぽり収まっているこ
の状況を理解するのに5秒
ほどかかってしまった。



「…えーとマルコ隊長?」

遠くの方でクルーの笑い声
が聞こえた。

「おれはキヨカのことな
んて好きじゃねぇよい。
愛してるんだよい、ばか」


そう言ってマルコ隊長はあ
たしを抱きしめたから、あ
たしはまたふふっと笑った
そして首を精一杯伸ばして
優しい微笑みをあたしへと
向けてくれているパイナッ
プル、否マルコ隊長の頬へ
そっとそっと口づけた。


「じゃあ、あたしのファー
ストキス、マルコ隊長にあ
げます」


そう言って笑ったら、愛し
い顔が少しずつ近づいてく
るのを感じたから、それ以
上なにも言わずにあたしは
静かに目を閉じた。





夏の初めに墜ちた鳥

(墜としたのはあたし
 墜ちたのは不死鳥、)

20101015 title by3gramme.

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