今は、もう誰一人として泣い
てやしない。


たくさんの花達の優美な香り
と共に、オヤジのコートがな
びく。エースのストーンのネ
ックレスがなびく。
白ひげの海賊旗がなびく。

それはとても風の強い日で、
太陽の輝く眩しい日。

グランドラインの後半、新世
界のとある島に、白ひげ海賊
団とその傘下の数多い海賊団
そして赤髪海賊団はいた。
エドワード・ニューゲート
ポートガス・D・エース
その二人の名の刻まれた石碑
の前には約二千人余りという
数の海賊達がいて、皆前を向
き胸を張っている。もう、誰
一人泣いてやしない。


赤髪が去った後、石碑の前か
らはぽつり、ぽつりと少しず
つ人の数が減っていき、赤髪
が去って数時間が経つ頃には
丘の上に私とマルコだけにな
っていた。
皆最後はマルコを、オヤジと
エースの3人にしてやりたい
と思ったのだろう。名残惜し
そうに船へ帰って行った。
その気持ちは私も同じだった
本当はここから、オヤジやエ
ースの傍から離れたくなんか
ない。
けどマルコを、これから一番
隊隊長として白ひげ海賊団を
引っ張っていくという重大な
役目を担ったマルコを、最後
にオヤジとエースの3人にし
てあげるという事は、当然で
あり必然的な事であるような
気がしてならなくて、私もオ
ヤジやエースと別れを告げ丘
を降り船に戻ることにした。



「キヨカ、」


数歩歩いた私を呼び止めたの
は紛れも無くマルコ本人で、
振り返るとその人はじっと石
碑を見上げたままだった。


「キヨカ、」


もう一度私の名を呼んだその
人、


「どうしたの?」


彼は石碑を前に、何かを祈る
ように目を閉じた。

また強い風が吹いた。





「結婚しよう」


振り向いた彼の表情は、一言
で言えばまっすぐだった。

凛と、凛としていた。


私とマルコの関係は仲間。そ
う、それだけの関係。お互い
大切に想い合ってることはど
こと無くわかってはいたけれ
ど、恋人同士なんてそんな生
温い関係、私もマルコも望ん
でなんかいなかった。
キスや、セックスはおろか、
抱き合ったことさえもない。

けれど、けれど


「マルコがそれを望み、オヤ
ジとエースが認めてくれるの
なら」

私は喜んで受け入れよう。






もう誰一人として泣いてやしない


「二人に認めてもらう為、
いま言ったんだい。」


そう言って抱き寄せられて、
初めて感じたマルコの体温

また強く、風がふいて
二人が確かに笑った気がした



どうやっても拭い去ることも、取り去ることも、忘れられぬこともできぬあなた達を失った悲しみ。私達はどれだけの涙を流し、どれだけの絶望を感じ、どれだけの行き場無き悲しみにうちひしがれたことでしょう。でも、もうそれも終わり。あなた達が私達が泣くことなど望んでるはずもないから。もう誰一人として泣いてやしない。あなた達は私達の笑顔を望んでるはずだから。私達は強いから。前を向くから。
だからねぇ、どうか安らかに


20101107
海へと還った二人へ心から追悼の意を込めて

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