チクチクチクチク


「確かに夢を叶えりゃこの国は良くなるさ!!でもだからってあの嬢ちゃんは幸せになれるのかよ!?叶うかもわからねぇ、男だって辛い夢とやらのために嬢ちゃんをどこまで犠牲にするきだっつーの」


「そうですね……たとえ彼女が頑張ったとしても医療設備が整うまでさらに年月は必要でしょうし、整ったとしても彼女に匹敵する知識の持ち主が現れるまで彼女はこの国に縛られるでしょうね」


「さすが話がわかるなぁ王子!!変えようとする努力は大事だが、シーギルハイトのやり方はシーギルハイトを殺すだけだ。もっとこう、抜本的にだなぁ……」


叔父と王子の、何てめぇが怖じけずいてんだ、って圧力を感じながら
沈黙に徹する

というか何故この二人が意気投合をしているんだ。同時に……俺の仄かな好意に気付いているのか?いや、叔父は多分リゼ殿と俺をくっつけたいだけか


密かに嘆息をつき
それでもぐっと堪える

「本当に良いんですか?アレン」

「構いません。後用事が終わられたのなら、情が沸く前に出立を」


きっぱり言い切ったことで産まれた沈黙
けれど叔父はともかく、王子は俺の意思を尊重してくれるから折れてくれた


「わかりました。アレンがそういうのならば、なるべく早いうちに出立をしましょう」


俺は、彼女の邪魔をしたくない
だから、彼女の前から消えないと、と思っていた



この年になって今更産まれた淡い淡い初恋だと思っていた筈…………だった



けれど淡い初恋は
特に大した理由も無く
大した出来事も無く




立派な恋へと変わっていたみたいだ




少なくとも




「大臣!!大変です、リゼっちが山賊に拐われたって街の兵から連絡が!!」


この言葉を聞いて、咄嗟に駆け出すくらいには



『恋心とは自由になら無いもの』









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