「ジゼル、買い物頼んでも良いか?」

「分かった。いってきます」

「え!?ちょ、ジゼルどうした?なんでそんなにノリ気なんだ?」

「ノリ気なわけじゃないけど、ちょっとね」



ポケットにある、マジックアイテムのブローチを服の上から撫でて
私は戸惑うリィヤを構わずに外に出た
マジックアイテムと言っても、魔力を宿せる金属に“私”の魔力を込めたから下手な魔法使いより強力なシールドをはれるはずだ


始めて身内以外にプレゼントをするつもりだから、なんだかウキウキする



ストーカーから助けてくれたお礼なんだけど、カイジュさんは受け取ってくれるかな
きっと仏頂面で「仕事ですから」とか言いそうだなぁ


楽しみで楽しみで、自然と笑みが溢れる

タタンっとステップを踏んで
私はノリノリで人の国へと飛んだ



まぁ、プレゼントを渡す以前に




「今日は素敵な笑顔を振り撒いてどうしたんですか?君の愛らしい笑みは嬉しいかぎりですがそれらを他者も見てるとなれば話は別です。ささ、私の腕の中へどうぞ」

「…………」


これがいるのを忘れていた
むしろ考えることを無意識に拒否していた

「さぁ今日はどこに行きましょうか?ああ、細工屋が隣国の最先端のガラス細工を仕入れたと言うので見学がてらエンゲージリングを見に行きましょうか」

「…………」

「あれ、今日は買い物では無いんですか?……私に逢うためにわざわざ会いに来てくれたんですね!?」


噴水に腰掛け
溜め息をつきながら、空を見上げた(隣はフルシカト)

不本意ながら、カイジュさんに逢うにはコレと一緒にいるのが一番逢いやすいから



精神をぎりぎりと削られながら、ストーカーと一緒に我慢の限界まで噴水で並んだ




『けれど私の心は広くない』




そう
結局カイジュさんは来ないとは

酒屋が閉まるギリギリまで一緒にいるはめになるとはその時の私は知らなかった






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