しばらく放心していた俺は
我に返ると、慌ててアーリィを追いかけた







が、









アーリィ=スピアラー=肉体派
俺=ウィザード=知能派








その体力の差は、致命的すぎた



「ったく、どこいったっ……」


最早その陰も形も見えなくなり
豪華な民家が立ち並ぶ町中を走り回る

けれどアーリィの姿は見つからなかった────………





「はっ、はっ、く、はぁ……」

速く、速く見つけてやらないと
姿は大人でも、感情がわからなくて困っている愛しい少女を

ちょっと走っただけで足はぱんぱんで汗も流れる
目に入り滲んだ汗を乱暴にぬぐい、ぐっと堪えてまた走り出す





速く、見つけて
安心させて



あんな泣き顔じゃなくて
ミリルよりも幸せな笑顔にしてやらないと





必死に駆けるそのとき…!!
不意に路地から飛び出て来た棒に反応することも出来ず






「っ!!!!が、はぁっ!!」




俺の腹部にめり込んだ棒
それはロッドだった

あまりのことに座り込み噎せていると人影が俺を覆った






「…………あいつ、泣かせてんじゃねぇよ。あんな顔されるくらいなら能面のがマシだっての」

「が、ぜ、るく…?」











「東の町のはずれに、俺たちが小さいときに過ごした家がある。母さんのとこも父さんのとこも、ずっと家庭教師してくれてる大臣のとこにも泣きつけないとき…………俺ならちっせぇけど幸せだったあの家で泣くけどな」





それは、
それは素直じゃない彼の、精一杯の応援で


俺は込み上げていた痛みも疲れも汗も押し込めて



「ありがとう!!」




それだけ言うと、すぐに東へ走った












『お姫様を探して』







「………………」


「何を拗ねてるんですか。もしかしたらこれで姉君が感情豊かになるかもしれませんよ」


「うっせーなぁ!!アーリィは能面でいーんだよ!!ったく……迎えに行かせてんじゃねぇよ…」


「それを言うならば、ガゼル様とて今彼にアーリィ様の場所を教えたじゃないですか。俺はあれ以上我が家を破壊されてはたまりませんから」


「俺はいーんだよ!!べっつに大臣だって嫁もいねぇし、家くらい壊れたっていーだろ」


「………………ガゼル様、そろそろ婚約者様との謁見の時間ですよ?」


「ふざけんな、誰があんな女んとこ「殺してでも、行ってもらいますからね?」」





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