ドグアアアアアアア!!!



目で追えないほどの早さで魔獣を突き刺し、あまりの衝撃で魔獣の体を木っ端微塵にした彼女は



その勢いに身に任せ、槍を持ったまままるでバクテンの様に軽やかに宙に舞い




ふわりと大地に降り立った

そのあまりの軽やかな動きに、無駄の無い洗練された動作に目を奪われる


「怪我はありませんか?」


「……いや、なにもしてないから…俺は」


「そうですか」


小さな村を恐怖に染め上げた魔獣を一撃でしとめた彼女は、何の表情も変えずに愛用の槍を布にくるみ


「では、参りましょうか……………旦那様」


まるで従者の様に、俺に手を差し出した


アーリィ・シャトー
俺の初恋の女性と瓜二つの彼女は従者でも何でもない。
実年齢5歳にして、魔族とのハーフの俺の婚約者だ











『平和の為に』






魔王国と人王国の和平交渉のさい
何が一番わかりやすく人と魔族が手を結んだことを伝えるかを話し合ったとき



魔族の王子は言った


「アーリィが人間の婿でも貰えばいーんじゃねーの?次期魔王様だしよ。んなに平和平和騒ぐんなら政略結婚ぐらい出来んだろーなぁ?」


そして彼女は軽く応えた


「なるほど、それは良い案だ。じゃあガゼルは人の国へ婿へ行け」


「はぁっ!?何いってんだよふざけ」


「丁度人の国には年頃の王女がいるから丁度良いだろう」


「マジでふざけんなよ!!なんで俺があんな性格腐った女と結婚しなきゃいけねぇんだよ!!」


「ああ、王女様にも選ぶ権利はありますね。どうですかうちの愚弟は?」


「俺の話を聞けよバカ野郎!!皮肉に気づけ!!」


「お前にしてはとても良い案じゃないか」






…………――――


本当なら勇者が最有力候補だったが


怪我をしない戦い方をしているのでヒーラーはいらない。物理職が二人いても効率が悪いからアーチャーは却下



戦闘面での相性と勇者一行と言う英雄効果で




ウィザードの俺が暫定婚約者に選ばれた



とは言え、一年間のあいだのとりあえず『婚約者』だ
俺はその場の空気で断れなかったが追々断るつもりでその話を受けた



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