「青春と言ったらやっぱりここでしょ!!!」
「あーはいはい」
隣でだらける男に一瞬興を削がれるも
眼前に広がる広い世界に自然と笑みがこぼれる
中学校の、屋上のさらに上の貯水槽の脇
学校で一番高いところから見る夕陽は、すっごく綺麗だった
オレンジ色の明かりに照らされて色彩を変える隣町までのゴミゴミした大好きな私たちの町
「良いねぇこの青春の背徳感!!怒られるかヒヤヒヤしながら屋上に来たりさ!」
「馬鹿は高いとこが好きだしな」
「うっさい!!なんかもう、青春エンジョイしてるって感じだよねー」
ぽふり、と
奴の隣に座る
夕陽と青春の高揚感
今なら笑って吐き出せる気がした
「笑って泣いて、失恋して赤点とってさ!!夕陽にわー!!って叫ぶんだよ」
「あーはいはい」
「ノリ悪っ!!それでも青春戦隊の一員か!?」
「ちげぇし」
そんな悪態をつきながらも、こいつはいつだって私の隣にいる
私を支えてくれる
夕陽が沈み
夜の帳が降りてくると
先程まで綺麗だった町は、夜の静寂に包まれた
「なぁ」
「ん?そろそろ帰ろっか」
「いい加減泣けば」
「…………」
「我慢なんかお前には似合わねぇんだから、さっさと泣けよ姉ちゃん」
姉ちゃんなんて
中学校入ってから呼んでくれなくなったのに
こんなときに優しくするなんて、本当にコイツはずるい
「ったく、無駄に強がりなんだから。浮気されてフラれてんのに笑顔で軽くオッケーなんかしなくて良いんだよ」
だってだって
好きだったから、困らせたくなかったんだもん
目頭が熱くなって
必死に歯を食い縛る
たかが数時間差とは言えお姉ちゃんなんだから
お姉ちゃんは強くないといけないんだから
なのに
「不細工なってんぞ。ったく器用不器用」
そう言って
コイツが私の頭を、私より大きくなった掌で撫でるから
「…………うるざい、ぶわぁぁかあああああああんっ!!!!」
ぷっつんと我慢が切れて
私は弟に抱きついて泣きじゃくった
好きだった
大好きだったの
恋して浮かれて笑って、フラれて落ち込んで一喜一憂して
こうして、私の青春はたくさんのページで埋まって行くんだ
『時間が経ったら笑って話せるようになるよね』
「こらあああ!!お前たち何してるかああ!!」
「やっべ、逃げるよ!!」
「いやどーせ明日に説教されるだろ、って、うわっ」
「また久瀬崎ツインズか!!こらまてえええ!!」
「逃亡もまた青春なり!!」
「…………はぁ」
帰