「ごめんなさい……殿下の事はお友達としてしか思えないの」
もう何度目だこの返事は
酒場では「殿下大好きー!!」とか可愛い声でいうくせにプライベートになるとすぐにこれだ
しかも二言目には
「殿下は友達としてなら楽しいけれど……恋人としてずっと一緒にいると疲れそうなんだもの」
よくこの疲れるが続く
どうなってんだ、疲れるとか意味がわからねぇ
俺は普通にしてるだけなんだぜ!?
とりあえず、傷心の俺の愚痴を聞いてもらおうと
いつも通り、仕事中の相棒兼親友の元へ向かった
「ニー!!に、セルディィィィィ!!」
執務室にはニーだけでなくかっちょいい弟のセルディもいた
つい両手を広げて二人に飛び付くと、ニーはさっと交わしたためセルディだけを捕獲した
「やめてください、兄上……酔ってるんですか?この真っ昼間に」
「聞いてくれよセルディ、酒場のジュディにフラれちまったよぉ!!」
俺よりひょろいセルディにがっつりしがみついて
大声で泣き言を言うとニーの野郎は「なんだいつものことか」の一言で終わらせやがった
でも優しい優しいセルディは俺をちゃんと慰めてくれるんだぜ!!
「……また町に遊びに行ったんですか?ニー殿に仕事を押し付けて」
「恋人になったら疲れるってなんなんだよ!!なぁ、意味がわかんねぇよなぁセルディ!?」
「あー、確かにずっと一緒にいたら疲れるな」そんなひでぇことを言う親友はため息をつきながらこちらに来る
そして繰り出された蹴りをセルディを片手に抱いてしっかりと受け止める
「ふ、甘いなニー!!」
「甘いのはお前だよ」
両手を塞がれた俺の首筋に
鈍い痛みが走る
そこで俺の意識は途切れた─────
「お前、なにしてっ!?」
「え?ああ、仕事をさぼって酒場に行くような上司にはこれくらいしないと醜態を晒しまくってしまうんで」
ぐったりと気絶したカイの肩を担いで、椅子に座らせる
本当に良い奴なのにカイは色々と残念だ。でもやっぱり本当に良い奴だから心配しなくてもいつか良い子に逢えると思う
私とカイのバイオレンスなやり取りに衝撃を受けたのかセルディ殿下は渋い表情で黙り込んでしまった
「まぁ、うちの主人がこんな感じなので数日は使い物にならないと思うので申し訳ありませんが今夜はお相手出来ません……たぶん徹夜なんで」
今日中に纏めないといけない資料がひぃふぅみぃ……あー、本気で終わる気がしない
「……そんなに甘やかしてるから、さぼるんじゃねぇの?」
「……まぁ俺はそれも含めて補佐するために此処にいますから」
やれやれ、と慣れきってるのでいつものように机の上に書類とペンを持つ
ちらりと見た彼はかなり不機嫌そうに眉間に皺を寄せていた
うーむ。このままじゃ殿下とカイの確執がどんどん広がるなぁ
「明日の朝」
「あ?」
「シェフの新作の朝ごはんをカイと三人でいただきませんか?」
不機嫌そうに不機嫌そうに頷く殿下
本当に、私の仕事は多すぎる
帰