「おい伊吹、なちってどんな飯を作るんだ?」

ある日、珍しく未紀の方から那智留ネタをふってきたから
俺は毎日作られるなちの料理を自慢した

「昨日の夜は大根とさんまの煮付けとマイタケと豆腐の味噌汁だったかな?朝飯は焼いたさんまと青菜のつけもの、さらに目玉焼きだ!!」

「………さんま率高くねぇか」

「今が旬ですっげぇ旨いんだってよ。まぁ同じ食材でも美味いから全然俺は気にならない」


比べたい訳では無いが、なちの料理の腕前は今までの彼女と比べても凄い高い。しかも和食については俺が見たこともない物も出てきたことがある

なち曰く、祖母が昔の人間で小さな時から和食を仕込まれたらしい。洋食は母さんにならったらしいがそちらも家庭料理しててうまいし

「今日はキノコご飯とてんぷららしいぜ」

「…………なぁ、突っ込むべきか」

「なんだよ」

「なんか完全に主婦してねぇかあいつ」



主婦=那智留
つまり俺=旦那

そんなことを考えていたら顔がにやけてきた
俺はこのままがんばって那智留を嫁にもらう気だ
死ぬまで那智留の手料理を食えるなんて幸せだよな………




「あ、あれ那智留じゃん」

「ん………は?」



食堂の入口で那智留は立ち話をしていた…………しかも男と。後ろ姿だから誰かわからないがりょーやではないのは確かだ


那智留は楽しそうに笑いながら話してて
男の方も身振りでだが、那智留と楽しそうで



ふつふつ、と腹の虫の居所が悪くなってきた


「おい伊吹、落ち着け」

「……うるせぇよ」


ゆっくりと歩み寄るが那智留は気付かない




「残したりなんかしないけどマジですごいよー」

「じゃあ今度食べさせてよ。それだけ凄いと興味がわくな」



「なち!!!!」

食べさせてよ
那智留が放った一言でカッとなって、名前を呼んで抱き寄せ男を睨む──が──


「斉藤も独占欲強いな。良いなぁ俺も早く帰ってろくといちゃつきたい」

「なんだ……水無瀬かよ」


男は絶対なる安全パイの水無瀬だった。こいつはモテる以上に既婚で愛妻家で有名だ
高校の時に籍をいれて超可愛い嫁さんとらぶらぶらしい



「じゃあ水無瀬、今度ろくちゃんの手料理を食べさせてよ」

「良いけど逢わせないからな。ろくはかわいーんだからこんな所に連れてきたらヤロウがむらがっちゃうから」

「えー、ろくちゃん可愛いから逢いたかったなぁ」



嬉しそうな嬉しそうな那智留は
やっぱり女の子のことでもりあがっていた。そのことに安堵すると未紀がニヤニヤと嫌な笑いをしていた




仕方ないさ、なちに関しては余裕なんか無いんだから
いつフラレるか気が気じゃないし



けれど、これからも────俺は那智留と一緒にいたい。それくらい大好きだから頑張るんだ



『ずっと一緒にいたいんだ』









「いやでも斉藤も愛されてるなぁ」

「は?」

「“美味しい料理を作ってあげたいんだけど、水無瀬なんか良いレシピ知らない?”だってさ」

「…………」

「なち……!?」

「彼女の手料理って良いよねー。俺はろくの手料理ならたとえ死んでも食うし」

「……食えないレベルの凄惨な料理だったら、愛妻家水無瀬はどーすんだ?」

「食べるよー。だってろくがせっかく作ってくれたんだし。たとえナイフが入らないくらい硬いホットケーキでも、衣だけのてんぷらでも」

「み、水無瀬も苦労してんだなぁ!!俺の彼女もひでーんだよ!!」

「でも俺はろくのそんなとこも愛してるし」



盛り上がる未紀と水無瀬
もくもくと定食を食べる那智留を見ながら




俺は幸せなんだなと心底思った


「伊吹、なんか好きな食べ物あるの?あんたいつも嬉しそうな顔するから本気でなにがあたりかわからないんだけど」

「なちが作ってくれるもんなら何でも好きだぜ」

「……なんでも良いって一番困る」






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