私の古い記憶にあるのは
優しく抱き上げてくれた、お隣のおにいちゃんとお姉ちゃんと
ちっちゃなちっちゃな柔らかい赤ちゃん


君が産まれたときにね、私はずっと君を守りたいって思ったんだ
大好きなお兄ちゃんお姉ちゃんの子供だし、私にとっても弟みたいで大切で―――――











「えーと、一応聞くけど、何してるのかな?」

真夜中
ベッドに寝転がる私の上に跨がる君
よしよしと頭を撫でても私の上から退いてくれなくて
体重はかけないようにしてくれてるから、重くはないけどこれは異常事態だよね


「……なんで、そんな冷静なの?」

「いやいや、十分慌ててますよ」

「俺はこんなに心臓ばくばくなのに、がんばってるのに、まだ俺を見てくれないの?」

「ん?見てるよ?」


はぁ、と溜め息を付かれて彼が私の上から降りる
自由になった身体を起こしてよく分からないが、隣にいる彼の頭を撫でるともう一度深々と溜め息をつかれた

「そんなに、親父が好き?」

「へ?なんのこと?」

「うちの親父が、初恋の人だっておばさんから聞いた」


お母さんったら何言ってるのよ!恥ずかしい……

「よ、幼稚園のころの話をされても困るよっ!?」

「ほら。俺がなにしても慌てないのに、あいつのことだとすぐにわたわたする」

むすっと睨み付けられて焦る
そんなつもりは無い
そんなつもりじゃないのに彼は完全に誤解しててどんどん凹みだしてしまった


「そ、そんなこと無いよ。どうしたの?今日はなんかいつもと違うね?えっとお菓子食べる?」

なんとか元気を出してほしくて、必死になると彼は子犬のよーな可愛らしい泣きそうな眼差しでじっと見つめて来た
某金融CMを見たときの気持ちが、激しく思い起こされた
か、かわいいっ…!


「俺のこと、好き?」

「好きだよ。」

「あいつより、好き?」

「好きだよ。だから泣かないで?」

「じゃあ――――俺の彼女になって」

「ふぅぇっ!?」

彼は中1
私は高3
完全に犯罪だ
驚いて返答が出来ずに真っ赤になってわたわたしてると、お願いー、お願いだからーと服を引っ張られて


子犬みたいな彼のお願いに
私は弱いんだ。
結局、私は押されるままにわかったと頷いた



「やった!報告報告!」

途端に嬉しそうに手を引く彼に
ちょっとだけ笑みが溢れる


大切な、大切な彼が笑っててくれるんなら、まぁ良いか














「お、坊主既成事実はもう作ったのか?」

「お、お父さん!?」

「まだー。でも言質はとって彼氏彼女にはなりましたー」

「なんか実の息子とは言え長年可愛がった娘みたいな子を取られるのは複雑だなぁ。でもこれからうちにもっと遊びにおいで?将来はうちにお嫁さんに来るんだから」

「お、おじさんっ!?」

「は?何言ってんだよ。坊主が俺んとこに婿養子に入るんだよなー?」

「うん、俺婿養子になる。だって父さん嫌いだし」

「え、ちょっとみんな何っ!?」

「ふふふお赤飯炊かないとねぇ」

「クリスマスイヴに赤飯とかなんか変じゃねぇ?」







「大好き。責任はちゃんと取るから、良いでしょ?」

「え、あ、うん?」


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