──────『かあさま』。





小さな小さな呼び声に振り向くが誰もいない

つつつっと視線を真っ直ぐ下に下ろすと


「!!!!!」


てのひらさいずの、くろいけだまが
私の足袋に掴まり後ろ足だけで立って見上げていた

驚きと踏まなくて良かったと言う安堵と共に、心構え無く小さな子ウサギに触れた衝撃でばっとその場から飛び退いて壁に頭をぶつけた

『かあさま、大丈夫ですか』

「だ……大丈夫です」

強打した頭を押さえながらその場にしゃがむと、ぴょこぴょこと跳ねながら私に近づいて(なんでそんなに可愛いの!!)もう一度私に触れて『本当に?』と首をかしげるのは

生後数ヶ月で言葉を発すると言う前例が無いくらい強い力を秘めたことが確定した私の長男


とは言え、果てしなく可愛いうちの子ウサギは今は心配性の良いお兄ちゃんだ



「どうかしましたか?虎卯(こう)」

『いいかげんに、なれてねかあさま。えんがわで亜虎(あとら)と兎季(とき)がねちゃったから毛布かけてもらおうとおもって』

「すみません………教えてくれてありがとうございます。虎卯はお昼寝しないんですか?」

『……二人に毛布かけてくれたら、僕も寝るよ』



そう言う虎卯の声は僅かに間延びしていて眠そうで
喜びで僅かに震える手を差し出すと虎卯は私の掌に綺麗に(かわいいかわいいかわいい)収まった


そのまますべらかな毛並みを微笑みながら撫でていると、虎卯もゆっくりと夢の国へと旅立った




年のわりに非常に大人びているけれど、虎卯だってまだ生後一年にも満たない子供だ





虎卯を抱いたまま縁側へと向かうとそこにはお腹を見せて万歳をしながら寝ている亜虎とそんな亜虎の前足の上に頭を乗せて寝ると言う器用な荒業をしている兎季がいた


兎季のせいで亜虎は万歳を止められないらしく、寝ながらうーうーと唸る姿はとても可愛かった

「どうしようも無いくらい可愛い子たちですね」


くすくすと笑い、兎季を退かしてあげると亜虎はすぐに横を向いた

亜虎の腹のあたりに、二匹の子ウサギを並べて



私も獣型になり子供たちを囲うように丸くなる






『晴れた日はみんなでお昼寝』










『!!!!!!』


そしてしばらくしてから目覚めると私の顔に寄り添うかたちで兎姿の來兎様もいて、悲鳴をあげかけた

どうしよう
この可愛いもの達を今すぐ人型でまとめて抱き締めたい

けれど寝起きはぐずる下の子達はそんなことをすれば泣き出してしまうだろう





我慢、我慢だ、


そう自分に言い聞かせながらぺろりと來兎様を舐めて私は皆が起きるまでなんとか堪えた



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