醜くて愛しくて可愛らしい、少女
髪の一房からせわしなくあちこちを見る瞳
その表情の一つ一つも、愛らしい声も純粋無垢な中身も


全てが全て、私の力で作られた私のために存在する少女





そっとすやすやと眠る彼女のあどけない無防備な寝顔に笑みが溢れる
そちらを向くと私の腕を枕にしているりりは、もぞもぞとくっついて来た


背中を撫でると、口を開いてふふふと小さな笑い声が聞こえた。起きたのかとも思ったがりりはそれでも寝ている



「……間の抜けた表情だね」


けれど、悪くない
私の腕の中でこんな表情をするのならば悪くない



人間であった彼女は、私の元へ来たときは既にボロボロに傷ついていた
骨が浮き出た痩せ細った体、全身にこびりついた泥、ボサボサな髪に常に怯える様


今とはかけ離れたあの姿

一族へと変わらせた際に記憶も肉体も何もかもを失ったのに、その傷は魂さえも苛んでいるかのように未だに彼女はたくさんの人間の群れを怖がる

そして家に帰ってから、私と買い物がしたかったと可愛らしく落ち込む



「いつになったらお前の全部を救えるのかね」



無垢な彼女にこびりついた、凄惨な過去の残思
それからも、何からも、全てから守ってやるから








お前はいつまでも、私の隣で笑っていておくれ






『込み上げる愛しさ』













カタリ
『救ったっつーか、堕としたっつーか、ハメタっつーか』


「やかましい。りりが起きる」


カタカタ
『まぁ俺としてはそのちびがいたらお前が人間を食わねぇから良いけどよ』


「私にはこれが居れば、他の物なんぞいらんからね」


……カタ
『ちびすけに愛想つかされて捨てられたら、お前人間と言う人間を殺しそうだな』


「お前とは違い私は人間が好きでは無いからね」


……
『こえー。ちびすけには悪いけど生け贄になってもらうしかねぇな』


「そう思うなら、くれぐれも横恋慕をするんじゃないぞ。お前は不味いに決まってるから喰いとぅ無いからな」


ガタガタ
『だから気の迷いだっつーの!!あまりにかわいそうだったから……同情だ!!同情だよ!!』

「私のりりに勝手に同情をするな」


ガタリ
『めんどくせぇ!!マジでお前はめんどくせぇ男だな!!』


「…………」


……
『寝るのかよ!!あーもう勝手にしろよ!!……はぁ、朝飯の支度すっかな』



















『あれだけちびすけを救って、それでもまだ救いたいとかぬかすお前の優しさに叶うやつなんていねーから安心しろよ』







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