『あのくそやろうが家に来たぜ。姉貴の住所教えろって』



勿論追い返したけど
そう言った美智留に心底感謝している


学校の行き帰りはだいたい伊吹と一緒だから一人でいるとこを狙うつもりなんだろう

すばるには悪いけど
私には今は伊吹がいる。昔の思い出に心は痛むけれど、そんなものは


「なち?どうした?眉間に皺が寄ってるぞ」

にっこりと笑いながら、私の眉間をさすさすと撫でる伊吹がいてくれるから
きっともうすぐ痛まない日も来るだろう。彼のそばに居れば、きっと


「……伊吹はいつも幸せそうで良いね」

「那智留が一緒だからな」

さらりと阿呆なことを抜かす伊吹に呆れながらも、ちょっとだけ胸がいたかったからされるがままに抱き寄せられる


「なちは俺といても幸せじゃない?」

「さぁ、どうだろうね」


途端に彼の表情が捨て犬みたくなったので、苦笑しながらそっと背中に手を回して抱きついてみる

ばっくばくと破裂するんじゃないかってくらい激しく音を立てる胸に頭を寄せて



彼は私を幸せにしてくれるんだろうな。きっと誰よりも



そんなことを思った








『もしかしたら好きを越えて愛しちゃったのかもね』




参ったなぁ、恋なんてしたく無かったのにもう離れがたいや



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