体の調子が悪かった
何だか微熱が止まらなくて、やたら眠い

元気は元気なんだやたら調子が悪くて
半休を貰い、貧民街で医者をしてる同じ家で育った兄さんの所に診てもらいにいって─────





「妊娠だな。生理来てねぇだろ」





驚愕した
思わずぽかーんと兄さんの顔を見てから


「は……?」



ゆっくりと
膨らみもない、簡素なシャツに包まれた自分の腹を見てそっとそこに手を当てる


こ、ども?


「心辺り、ねぇのか?」

「……ものすっごい、ある」


今まで妊娠しなかったのが不思議なくらい不定期にたくさん彼に抱かれて
殿下は避妊なんかしてくれないから、彼の子で間違えないだろう。そもそも殿下以外を受け入れて無いし




王家の血を引く、子供で
私に無理強いをしいる殿下の、子供で

優しくて、不器用で、わかりやすい彼の────────


「その様子じゃ、イタズラされてとかじゃねぇんだな。堕胎させる気は無さそうだな」

「それは無い。産むよ、今の生活を捨ててでも」


きっとこの子の存在を王を初めとした王家の人たちは許さないだろう
カイにも家族にも迷惑をかけるだろう



それでも私は、この命を消すつもりは無かった


私自身が親に捨てられた身だけれど、それでも生きてるしそれなりに幸せだから
なんとしてでも産んで、この子を幸せにしたい



──────何より、殿下と私の子だから












「おい、なんだよこの手は」

「申し訳ありません。ちょっと体調が本当にすぐれなくて」

彼の部屋に呼び出されるなり、ベッドの中に引きずりこまれるが頭を下げて謝罪をするとそのまま強く抱き締められた

「仕事ばっかしてんからだろ。無理してんじゃねぇよ」


そう言って私を腕の中に納めたままさりげなく回復魔法を使ってくれるセルディ殿下
今日はきっとこのまま抱かれないだろう



彼は何だかんだ言いながらもとても優しいから
ぶっきらぼうに言いながらも、その宝石みたいな瞳に写る色は心配そうなソレだ


「申し訳ありません」

「今日はさっさと寝ろ」




私を縛り付けた腕の中でそっと目を閉じる

腹が膨らんで来たら、王宮から……この国から逃げよう。カイと殿下に迷惑をかけずにこの子を守るにはソレが最適だ


でも、それでも



(この人がお父さんだよ)


今は、
今だけは
少しでも“三人”で
優しくて泣きそうなこの時間を過ごしたかった。




『次の休みには、君の服を買いに行ってあげるね』







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