「いいなぁ、那智留さんも浅黄さんも……」

「はぁ!?あんなへたれウザいだけだ「浅黄っち」」


俯いてスカートを握りしめて
歯を食い縛って涙を堪える
私も、知りたい。みち君と仲良くなりたい……


『恋人』と親しくなりたいって思うのは、普通のことだよね?

なんで私にはそれが出来ないのかな


「……美智留はバカで不器用だから。嫌いになった?」

「そんなことっ」

あるわけが無い。好きだから、大好きだからこんなにも辛いんだ
俯いたまま首を振るとぽふぽふと頭を撫でられ



涙がこぼれかけた



「うちのバカを好きになってくれてありがとうね。杏理ちゃんはもう美智留の気持ちを信じられない?」


「信じたい、んです…冷たくても、そっけなくても…あの言葉を私は信じたいんです」


抱き締められた時に感じた力強い腕
耳元でささやかれた必死そうな愛の言葉
信じられる要素は、今の生活には全く無い
だけどでも、私はあの言葉を信じていたいんだ────


「そっか」


撫で続けられる手が、さらに追加された
ゆっくりと顔をあげると二人とも私を撫でててくれて


その優しさに、こらえていた涙腺がついに決壊した













「っ、おい!!何泣かせてんだよ!!」

「み、みちく…ん…?」

しばらく泣き続けた私は、突然やってきたみち君の怒鳴り声に驚いたが
それ以上に彼の服装に驚いた




彼は、有名なガソリンスタンドの制服を着ていた



へ?
涙も引っ込んで腫れぼったい目で彼を見上げると手を取られ引き寄せられる


「……ちゃんと聞いて、話し合いなよ。不安も不満も言わなきゃわからないよこのバカは」

「は…?姉貴杏理になにした」


那智留さんはそういうと、明らかに怒ってるみち君を無視して伝票をひらひらさせながら浅黄さんと店を出ていった


「……」

「……」



あとに残されたのは、私とみち君
涙はもう出ないけど気まずいことこの上ない
彼ははぁ、と溜め息をつくと那智留さんが座っていた椅子に座って私を見た。目線だけで、どうした?と言ってるのはなんとなく理解できた


「み、みち君どうしてここに?」

「姉貴からメール」

「ば、バイト始めたの?」

「あぁ」

「え、と……」

何を話せば良いのかわからない
結局縮こまって俯いて黙ってると、また溜め息をつかれる



「なんか言いたいこと、あんのかよ」

「……」

「聞きたいこと、あんの?」





聞きたいこと、なんて
たったひとつだけ……














「私のこと、少しでも好き?」




















「……今は、やめろ」


好きって、言ってもらえなかった
がーんっとショックを受けて目の前がぐらぐらする

悲しみより何より苦しかった


横を向く彼は俯いて私には気づかない



「お前は姉貴の力で奪ってきたようなもんだから、姉貴に金を返すまでもう少し待てよ」

「え……?」


「ちゃんと俺のものにしねーと、ぐだぐだしちまうだろ」


「みちく……」


「だからんなこと言うんじゃねぇよ。お前に関しては俺の理性は脆いんだから」


なんにも言えなかった
呆然としながらみち君を見ると、そっぽを向く彼の頬は僅かに赤らんでいて






私はちゃんと、好かれていた
その事を理解できて涙が出そうなくらいの喜びが込み上げる




「みち君好き!!大好きだからっ!!」

「……んなこと知ってんよ」



笑顔で何度も好きと言うとみち君の首も赤くなった
それがまたおかしくて、おかしくて




笑いながらまた涙が溢れたけど
それをぬぐってくれる手はぶっきらぼうで優しかった






『リ・スタート』




君と私の再出発






今度は不安に感じたら、ちゃんと言うね




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