卵を、拾った


それは秋始めの少し寒くなり始めた時期に
私の樹のすぐそばに落ちていた
とりあえずソレをそのままにするわけにも行かずに私は一抱えもあるソレを抱き抱えて樹の中に入った


本来なら本体に他者を入れたりなんか出来ないけどこのままじゃ死んでしまうかもしれないから……
亡くなった私の子供たちとこの卵が被り、そんなことは出来なかった





「大丈夫かな?うーん一応部屋も暖かくしておこうか」

くるっと私と一緒に毛布で包み、ついでに術で室内の温度を春先くらいの暖かさにする

この卵は明日にでも迷子として提出しなくてはいけない



この卵には母親がいるから
それは私では無いから
……母親から子供を取り上げるなんてことはしない。でも、それでも


「もう夜だからね……本殿に人もいないし今晩だけ。今晩だけは私と一緒にいてね?」


仮初めでも、一日だけでも
死なない子供と共に過ごせることが嬉しかった





それがまさか、あんなことになろうとは

















「私は銀だよ……大丈夫?暑すぎたり寒すぎたりしてないかな?」

着物越しにさすさすと卵を撫でる
そう言えばこの卵はなんの卵なんだろう
樹仙界に卵生の卵は無かった筈だ



そんなことを考えていると、


パリッ


「えっ!?えぇっ!!」

卵に、ひびが入った
パリパリパリ
どうしよう、どうしよう、
そんなことを考えていると桜色の卵から………



小さな人型の綺麗な男の子が産まれた




その子は小さな手で私の両手を握り、嬉しそうに笑いながら言った








「優しい銀さんに惹かれてしまいました。些か歳の差はありますが、どうか私と結婚して下さい」







これがのちに私の旦那となる六花との出逢いだった







「ふふふ、私は銀に拾われるなんて本当に幸せでしたね」

「私は毎晩夜這いされて既成事実まで作られて悪夢の始まりだったけど………」

「そんなことを言いながら、今は私のことを愛してくれてるんですよね?」

「………かなり不覚だけどね」






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