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[22]干支物語
by うみか
2011/02/12 10:37
管理人:干支物語


「!!!!」

「面白い服でしょう?」

こくりと首を傾げる愛しい人
愛しい人。なのになのに…彼は………


「これで利虎殿と同じ虎みたいですね」


虎をイメージした着ぐるみを着ていた
上から下までじっくり見る。
顔―來兎様
服―黄色地に黒の模様
下―たれる細長い尻尾



虎。來兎様が虎。



來兎様が、とら。



両手を開いて首を傾げながらこちらを見守る彼を改めてもう一度じっくり見る




虎。虎だ。虎ですね。




「利虎殿?どうかしましたか?」

「………」


私のコーナーに置かれた、たくさんのぬいぐるみの中に潜り込み
うさぎさんのソレらをぎゅっと抱き締めながら、ちらっと來兎様を見て気まずくて気まずくて視線を逸らす


來兎様は、私の兎着ぐるみ可愛いって言ってくれたのに



言ってくれたのに





「………來兎様は兎が良い…」



嫌だった。彼が同族になるのは、粗野で荒っぽい一族の男みたいになるのは嫌だった。


來兎様は來兎様のままが良かった。なんか兎じゃない來兎様を否定するみたいで嫌だけど、

「………」


改めて見ても、やっぱりやだった。
ぎゅうぎゅうとぬいぐるみを抱き締めて顔を埋めるとパタンと言う音がして
ハッとすると彼はもうそこには居なかった



「らい、と、さま…?」



一瞬現状が理解出来なかった
私が、虎の着ぐるみを着た來兎様を、受け入れ無かったから―――――嫌われた?もしかして捨てられた?


あまりの恐怖で全身がカタカタと震えた
身体が、動かない
呼吸も出来てなくて、くるしかった。すごくすごくくるしかった


息を吸いたいのに吸い方がわからない。わからない



ぽろっと頬を伝う何かの感触でヒクッとひきつった痙攣とともに肺に空気が入った

けれど一度入ると、ヒクッヒクッと涙と痙攣が止まらなくて
混乱したままぬいぐるみに頬を寄せると、柔らかなソレらが私の涙を吸いとった



「利虎殿、すみません着替えて来ましたよ……って何故泣いてるんですか!?そんなに嫌でしたか?」

「っ!!」


不意に再びドアが空いて、いつもの服装の來兎様が現れると今まで抱き締めていたぬいぐるみを投げ捨てて彼の腕の中に飛び込む

その優しい腕の中で、捨てられて無かったことに安堵してさらに酷く泣きじゃくった

ごめんなさい、ごめんなさい。ワガママなんて言いません。どんな來兎様も大好きですから――――この手を離さないでください。









『虎、怯える』





「申し訳ありません……もう着ぐるみなんか着ませんから、泣かないでください」

「き、着ぐるみ來兎様も、大好きですから着ても大丈夫、です……」

「そんな不満そうに言われても……僕は利虎殿の喜ぶ顔が見たいだけですから、利虎殿が嫌なら着ませんよ」

「……本当に?」

「はい。だからキスして、仲直りしましょう?大好きですよ利虎殿」

「私も大好きです!」



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