理由をつけて貴方のそばにいられると思った



「おかえり、エミーリア」
 畑の仕事を終えた私は足早に帰宅した。灯りが灯っていなかったので何かあったのかとドアを勢いよくあけたが、そこに居たのは顔を粉だらけにしていた博士だった。
「ああ、もう灯りくらいつけてください。心配しましたよ」
 以前二、三日隣の村へと仕事の手伝いに行ったときがあったのだが、私が家に帰ってきた時灯りがついていないという事があった。太陽が沈みあたりが暗くなってきているというのに、どうしたのかと思いドアを開けると倒れている博士が目に入った。博士!と直ぐさま駆け寄ったらぐったりとしている。か細い声で「え、ミーリア…」なんて呼ばれ私はぼろぼろと涙がでてしまう。
「何があったの?!」と普段の口調と変えて博士にしゃべりかけたが、「おなか、すいた…。」といってまたぐったりしてしまった。
 今日もまたあの日の様に倒れているのじゃないかと本当に焦ったが、そうでもないみたいで安心した。
「見ておくれ!今日はパンを作るための機械を発明したんだ!」
 自慢げに話す博士に苦笑する。台所をみると小麦粉が散乱していた。
「これは、この紐を引っ張るとこの棒が回転してパンと水を混ぜてくれるんだ!」
 にこにこと嬉しそうに話す博士。実際にやって見せてはくれるのだが、どう見てもふつうに作業した方が効率はいいし、ここまで散らかしはしない。
 ああ、また変な物をつくって。
「博士、この散らかった部屋はどうするのですか」
「う、ううむ。そうか、なら次は掃除をする為の発明をしよう」
 …駄目だわ、本当にこの人ったら。
 にこりと笑って、僅かにボールに残ったパンの生地をつかみ出す。ばんばんと叩き、生地に空気をいれた。べとべとしているが、散った小麦粉をつけていき、本来作る際の固さへと導いてゆく。
「パンは耳たぶくらいの固さにするんですよ。本当に何も出来ない人ですね」
 そう言うと博士はうなり声をあげた。



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