怪談
真夏の怪談なんてよく聞くけれど、今回はそれに限ったことでは無かった。
いや、ある意味で言うのであればそれもある種の怪談だ。
教室に残り、俺、翔平と寛人と美也子が一つの机を囲むようにして話をしていた。
翔平の提案により怪談をしようという話になった。
まず初めにとばかりに言い出しっぺの翔平が学校で起こったという話をする。
声に抑揚をつけまた雰囲気を出し語る翔平に美也子がひっと肩をびくつかせた。
全てを話し終えた翔平が美也子の背中へと手を忍び寄せた。
「うぎゃあ!」
いきなり触れられた事でびっくりとしたのだろう。美也子が叫ぶ。
何びびってんだよ。と翔平が言い、女の出す声じゃないなと寛人も美也子をからかう。 正直、俺は美也子叫び声に驚いたが表には現れなかったようだ。
「さて、じゃあ、次はお前な」
翔平に指を指され指名された。さて、何を話そうか。
「そうだな…」
俺はゆっくりと口を開いた。
「うようよと蠢くのは肌の色に近い物。てらてらと光り輝く其の生き物は気持ち悪く、見渡す限り、その生き物で埋め尽くされている。」
「はい?」
美也子が間抜けな声を上げるが俺はお構いなしに続けた。
「その生き物はミミズだ。足下まで全てミミズで覆い尽くされているんだ。想像しろ。一面がミミズで埋め尽くされているんだぞ。そして、その場から離れようとすると足の裏にミミズを踏んだ感覚が広がる。ぶにゅりとして、微妙に冷たい。そして、それだけのミミズの大群がいる為、何とも言えない香りが鼻孔を突く。そして、その中に一匹のでかいミミズが現れる。そいつは体がでかいためか、体の輪の一つ一つまでも確認出来るんだ。もちろん水分を吸ったばかりの様で他のミミズ同様ぬらぬらと光っている。そのでかいミミズが己の体へ巻き付いて…
「ぎゃああ!」
…なんだ美也子…人がせっかく話しているというのに。
「やめろ…それ以上言うな!」
「何を言う。まだまだこれからだぞ」
寛人が耳を両手で押さえながら懇願する。
「普通の話じゃつまらんだろうが」
「な、それどこからきた話だ?」
「今日見た夢の話だが」
とりあえず、そんな彼らの一日。