携帯アマイモン


私は新しい携帯電話を買うことになった。以前使っていたのは水没して使い物にならなくなったからだ。今まで撮っていた写真も音楽も、全部パー。大ダメージである。
だから今この光景も、その大ダメージの影響だと思いたい。というか、そうとしか考えられない。

「初めまして」

目の前で礼儀正しく挨拶する少年は一体誰だろう。今日は私以外を部屋に入れた覚えはないし、何より知らない人間を招き入れるほど警戒心を欠いてはいなかった。

「葵、でいいですか?」

けれど現実に目の前に見たことのない人間がいるのは確かだし、しかも何故か、私の名前を知っているようだった。

「えー、あの、誰ですか?」

一応聞いてみる。しっかり逃げの体勢は取りながら。すると少年は、無表情のままで信じられないことを言い放った。

「ボクはあなた……葵の携帯です。アマイモンといいます」

「警察呼んでいいですか。というか呼びます」

買ったばかりの携帯電話を目で探すが、見当たらない。確かこの辺りに置いたはずなのだが。
するとアマイモンと名乗った少年は、首を傾げながらこちらへ近づいてくる。それに恐怖を感じて後ずさろうとするが、あっさり捕まった。

「な、」

「どうぞ」

「……は?」

来ると覚悟した衝撃は来なかった。その代わり差し出されたのは腕。
しかもその腕には、ディスプレイのようなものが付いている。というか埋め込まれてる。

「何これ」

「画面です。番号言ってくれれば、かけますよ」

果たして、何が起こっているのだろうか。



衝撃携帯電話!
機種名:アマイモン
価格:\-----
色:濃い紫
タイプ:スライド式
注意:定期的に構ってあげてください。退屈になると攻撃的になることがあります。
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