VD 2011 三成編


「……ちょ、こ?」

三成はそう可愛くつぶやくと、そのすぐ後に綺麗な顔を歪めて吐き捨てるように言った。

「下らない」

バレンタインを説明した私に対して恐ろしくひどい言い方だが、こちらはそれを予測していたのでダメージはない。
むしろこれは軽い方だ。
もう少し機嫌が悪ければ「下らないことで私の時間を無駄にするな。斬滅されたいか」くらいは言われるだろう。

ちなみに失せろ、消えろ、死にたいかは三成の口癖だと私は思っている。
そうでないとやってられない。あ、なんか涙が出てきたぞ。

だがここまで言われてもめげない私って、ある意味凄いと思う。
根性だけはあるっていうのは、竹中さま、大谷さんからのお墨付きだ。なお、鈍感さも誰にも負けないだろうねと笑顔で言い切ったのは竹中さまである。

「下らなくないですよ。結構盛り上がるんです」

「それがどうした。私には関係無い」

取り付く島もない言い方だ。
まあこれもいつものことなので気にしない。

「関係ありますよ、今は私がいますから!」

ぴっと自分を示して見せれば、帰ってきたのは冷たい視線。
しかも人を射殺せそうというよりも、訳が分からないという呆れのもの。
珍しい反応だけに、本当に意味が分かっていないのだろう。

「だから、三成さんって何が好きなんですか?」

「何を言っている」

訝しげに表情を顰められて、私は思わず肩を竦めてしまう。
なんて鈍いんだ。秀吉さまに関しては、引くくらいに鋭いというのに。

「だって三成さん、結構偏食って聞きました。あげるからには食べて貰いたいし」

この偏食情報は、家康さんからだ。

三成さんは放っておくと、ろくに食事も取らないらしい。本人曰く、興味がないんだとか。
そのうち栄養失調とかで倒れる気がする。

「何故貴様が、私に渡す必要がある」

心底嫌がっている。なんてことだ。
だが私には、三成さんがこの楽しいイベントに参加したくなる秘策がある。

こほん。一つ咳をして、始めよう。

「日頃お世話になってる人にも渡せるんですよ。感謝を込めて」

あ、でも。
私はわざとらしく、引いた。

「三成さんはやらないんですよね。まぁ、日頃感謝を態度で現してるから、必要ないですもん」

三成さんの眉間にシワが増えた。

「私は秀吉さまと竹中さまにもお渡ししますけど」

「貴様ァァアアア!」

食いつきは良好だ。
良好過ぎて掴まれた肩が痛い。助けて。マジで。

何も言えない私にじれたのか、今度は揺さぶりを加えてくる。ホントに意識が飛ぶぞ。

「わ、私にも参加させろ……!!」

「うっ、わ、わかりました、わかりましたから!」

……正直なところ、三成さんって一途過ぎて馬鹿で、凄く可愛いと思う。
私の単純な作戦に引っかかってくれる辺り、もう凄く素敵。

「む、ではまず何をすればいい」

「なら、そうですね。あげるものを見繕いにいきましょうか」




ちょっとズレたバレンタインになりそうだけど、デートには漕ぎ着けました!



fin...


みんな三成にハマればいい。
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