高校三年生といえば最高学年だ。入学したばかりの頃は三年生なんてずっと年上のように感じられて、無駄に萎縮していたのを覚えている。年なんかほんの少ししか違わないのにきっちり敬語なんか使ったりして、今考えると少しおかしい。
しかしこれは変だと思うのだ。どう考えてもこの一年生の男の態度は、無視できないものである。
「つまりどういうこと?」
「月島、いい加減、その、馬鹿にしていますみたいな見下ろし方をやめなさい」
「だって小さいんだから、自然と見下ろすのは仕方ないことだとおもうけど」
この目の前にいる月島、高校一年生は、決して私に敬語を使わない。それどころかその長身を生かして、馬鹿にしたように見下ろしてくるのだ。こいつマジこの野郎。
いやまあ私は別に、敬語がどうのと心の狭いことを言いたいわけじゃない。仲良くなればそんなもの必要ないと思うし、本当にたかが少し先に生まれた程度の話だ。強制なんてする権利、私にはない。ない、が!
「ならせめて、澤村たちと同じレベルで相手してくれない?」
この月島という男、私個人に対してと、他の三年生にへの対応がまるで違うのだ。
「僕、尊敬する人には自然と敬語が出るタイプだから」
「それはアレか、私が尊敬するに値しない先輩だと、そう言いたいのか」
「先輩って柄じゃないデショ」
ぽんぽん返ってくる言葉にギリギリする。思わず手が出て腰あたりに拳がヒットするが、月島はなんのダメージもないようだ。むしろその隣にいる山口くんのほうが、申し訳なさそうである。
「痛い。仮にも先輩が、後輩である僕を殴っていいの?」
「都合のいい事ばかり言いやがって……なんて生意気な後輩だ!!」





普段はほとんど関わることのない、高校一年生と三年生。たった二年くらいの差しかないのに、この距離は恐ろしく遠く感じる。
僕が見下ろしているこの小さな女の先輩は、そんなこと少しも感じてなんかいないだろうけど。
「少しは礼儀正しい山口くんを見習ってほしいものだね」
「いやあ、はは……」
少なからずこちらの心境を勘付いている山口は、先輩に曖昧に笑っている。ついでに肘で突いてきているのは、僕が面白くない顔をしているからだと思う。
でも仕方ないじゃないか。こんな風にでもしないと、先輩は決してこちらを見続けてはくれない。ひとことふたこと話して終わりなんてごめんだ。ただの礼儀正しい可愛い後輩になんて、絶対になりたくない。
この人は覚えていないんだろうか。以前は時々すれ違うだけ。挨拶を交わすだけ。こちらがどんなに視界に姿をおさめても、先輩は一瞥すらしていってくれない。
こっちはこんなに、その姿を追いかけているのに。
「ほんっと鈍い」
「今の会話の中でそんな風に言われなきゃいけない理由がないんだけど!?」
「そこからだめだね」
きゃんきゃん食いついてくる先輩を見ながら、少し口元が緩む。これはやっぱり当分、やめられそうにない。
「ツッキー、歪んでるよ……」
「うるさい」


...end

見下ろされ隊
20140621
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