「魔女さん、」
「はい、お誕生日おめでとうございます」
「……ありがとうございます」

「魔女さん、」
「はい、こちらがお菓子です」
「……ありがとうございます」

この無駄の一切ない会話の後、私は心の中でガッツポーズをした。だって毎年何らかの被害を受けているのに、今年は何の問題もなく過ごすことが出来そうだからだ。
今日はLの誕生日であり、ハロウィンでもある。常に正体を隠している彼は(緊急な事件を抱えていないときは)毎年こうやって、ひっそり祝うのだが……。
「何が不満なんですか」
「この用意周到さが不可解です」
Lは不満らしい。毎年何らかの形で私を困らせているLには、確かに物足りないのだろう。
「不可解って……」
「普段のあなたならもう少し抜けているはずです」
「抜けてるって……」
随分ひどい言い様だ。だが毎回何かしら引っかかっている私は、そういわれても仕方ないのかもしれない。だからこそ、だからこそ今年は、最強のスケットを用意させてもらったのだ。
「どうしてですか?」
「実は、夜神くんに相談したんです」
勿論誕生日のことではない。ハロウィンのお菓子の隠し場所についてや、Lがとるであろう行動の事前回避の仕方。
高い頭脳を持っているだけあって、それはもう素晴らしい対策だった。思わずお高いケーキをお土産に沢山持たせてしまったくらいだ(ちなみにそれはLが食べるはずだったケーキである)。
「……月くんに?」
「そうです」
Lの雰囲気が少し変わる。多分、何か怒っている。自分のものだと思っている私が夜神くんに相談したのが嫌なのか、自分の考えていることが悉く読まれてしまったのが嫌なのか。当然、私には判断できない。
「……そうですか」
「L、」
「……」
へそを曲げたらしいLに私はそっと近寄った。
「私は今日、Lの為に準備したんです」
定位置に座るLは、まだこちらを見ない。
「いつも悪戯とか罰ゲームで、何かをやったりするのは嫌だったから。だから知恵を貸してもらったんです。私だけじゃどうにもならないから」
彼の為にやるのなら、そういう理由抜きでしてあげたい。
「だから今日は普通にお願いしてください。出来る限り、叶えますよ」
Lの肩が微かに動いて、それから小さな声で言った。
「なら、一緒にいてください」
「はい」
「今日だけじゃなくて、ずっとです」
「はい」
「ずっとですよ」
「勿論です」
Lはちらりとこちらを見る。どうやら機嫌は直ったようだ。


しかし夜神くん、本当にLのツボをつく言い方を考えるのが上手い。これからはLマスターとでも呼んだ方がいいだろうか。



end...

夜神月とLがデスノート抜きで関わったらこんな感じかなと思う。
20111031
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