84 物語
そして海神島にミールが根付くのが間近に迫った時、フェストゥムが現れる。
「・・ゴーバイン、出撃」
ナマエはそう言ってニーベルングシステムに指を通す。
目的は遠い空に浮かぶミール、ヴェイグランドの破壊。里奈と彗がゼロファフナーに乗り、彗の能力で地上へ落とす為に他のパイロットにはシールド、そして多くのフェストゥムの殲滅が言い渡された。
「・・ふ、戦い方まで似てるのか、お前たちは」
縦横無尽に飛び回り華麗に敵を倒していくナマエに、総士はそう笑った。
「・・少し、羨ましいな」
ニヒトで敵を倒しながら総士は呟く。
「だが僕もお前たちに負ける気はない!行くぞ!ニヒト!」
その口元は笑っていた。
やがて彗がヴェイグランドを海神島へ落とす事に成功する。それを確認した各々は、真っ先にそれを目指した。
「今、痛みを解放してーー!」
進む先を皆同様、ヴェイグランドへと向けたナマエは新たな存在を感じた。
「・・とても、悲しい存在」
見つめた先には、マークヒュンフの改良型。
「見ろ!俺にも乗れるぞ、父が作ったザルヴァートルモデルが!!」
搭乗者はミツヒロ・バートランド、かつて長い地獄の様な旅を共にした者だった。
「・・なんて大きな憎しみ」
ミツヒロに一騎、ナマエ、総士、甲洋、操が一点に向けて刃をつけ付ける。
「っ、この5人を止めるだと!?」
総士は俄かに信じがたい現実に眉を寄せた。
「私が行く」
そう言ってナマエは正面からミツヒロへと斬り込んで行く。
「なぜ、心があるのに私達と戦うの」
「・・っナマエ、君は心が!?」
ナマエの言葉にミツヒロはハッとする。
「うおおおおお!!」
「!」
その背後に一騎が迫っていた。
「ミツヒロ!!」
「!?」
その間に人間ではなくなったアイが割って入った。
「アイ・・っ!!」
一騎のルガーランスはアイの機体を貫き、搭乗者をも傷つけていた。
「ミツヒロ、真壁は・・私が」
アイはそう言ってフェンリルを起動する。
「人じゃない・・だけど心を感じる・・っ」
一騎の動きが止まってしまった。
「・・っ一騎、」
ミツヒロと刀を押し合っているナマエは一騎の元へ行けず、唇を噛む。
「躊躇うな!一騎!!」
総士が声を上げる。
「お前たちとミールの調和を消してやる」
元第3アルヴィスのコアが一騎の手に触れる。
「・・ああっ!!」
一騎同様、ナマエの腕にも赤い結晶が生まれ始めた。
「かず、き・・っ」
そしてナマエの機体は地上に堕ちていく。
「ナマエ!返事をしろ!!」
「・・・」
「くそ・・!」
返答のないナマエに、総士は苛立ちを露わにした。急速に落下するナマエに必死に手を伸ばす。
「届けえええええ!!」
そして地面衝突間際でようやく彼女の手を掴んだ。
「・・はぁ、はぁ」
「そう、し・・」
聞こえて来た声に総士は胸を撫で下ろす。
「大丈夫か?」
「・・っ、行って!」
「!」
伺う総士に、ナマエは声を上げた。
「皆が、消される・・!」
「ミツヒロか・・!」
「早く!」
自力で体制を立て直し、ナマエは総士を押した。
「私も・・すぐ、行く」
「・・っ、無理はするなよ」
そして総士はその場から去った。
「そいつを拒ん、で・・きゃあああ!!」
突き出る結晶の痛みに身体を仰け反らせる。
「一騎・・っ!!」
ーーパリン
ナマエが一騎を呼んだ瞬間、結晶が砕ける。それは一騎がミールの調和を保った事を意味した。
「はあ、はあ、」
肩で息をして呼吸を整える。
「・・行かなきゃ」
そしてすぐ様その場を後にした。
「・・っ」
ついた先ではやはり皆が倒れ、とても戦える状況になかった。
すると総士がミツヒロを抱え凄まじいスピードで空へ上がっていくのが見えた。
「・・っ上空へ行く!地上では島が沈む!!」
戻った一騎とのクロッシングが聞こえ、ナマエもその後を追った。
そして雲の上、蒼い空に辿り着く。ミツヒロを前に、3機が面と向かった。
「・・・」
ナマエが駆け出したのを皮切りに4機の戦闘が始まる。だがこちらの攻撃はミツヒロの放つシールドを破れない。
「1機ずつではシールドを破壊出来ない」
「タイミングを合わせる!」
そして3機は同時に上へと羽ばたき、ミツヒロの攻撃を避けていく。
「・・っ!」
しかし総士が腕をやられ、痛みに顔をしかめた。
「行け!一騎!ナマエ!」
総士の言葉に2人が抜け出す。
「うああああああ!!」
「・・くっ!!」
2本のルガーランスをシールドに突き立てる。そして2機の肩に総士が触れ、力を増幅させた。
「やれ!その怪物を消し去れ!!」
「うらあああああ!!」
「っ!!」
そしてシールドは音を立てて破られ、2本の刀の攻撃によりマークヒュンフは片腕を失った。
「!!」
だが直後の反撃により、ナマエは機体の4分の1、総士も攻撃をもろにくらってしまう。
「きゃあああ!!」
「ナマエ!!総士!!」
2機が降下し、2人はその衝撃を全身で受けた。
「立てマークニヒト、まだ終わりの時ではないぞ・・!」
「・・っ」
「ナマエっ、無事か」
ナマエの機体の損傷が激しい、この身体でなければ即死は免れなかっただろう。
「私は、大丈夫・・っ!」
瞬間、機体が結晶で覆われる。
「・・はあ、はあ、」
パリンと高い音を立てて機体を持ち直す。だが、肝心の身体が動いてくれない。
そこに2機の無人の機体とクロッシングした剣司が総士の元へ現れ、ニヒトを再生する。
「ポイント更新、もうお前たちしか動けない。ヴェイグランドを頼む!」
「了解した」
動き出そうとする総士に、ナマエの腕が伸びた。
「私が、行く・・お前はもう、」
「・・君こそ立てないだろう」
「立てる・・!」
「だが戦えない」
総士の言葉にナマエは言葉を詰まらせる。
「・・一撃、」
「なに?」
そして呟いた言葉に総士は問い掛ける。
「私が上から一撃で動きを止める」
だからコアはお前がやれとナマエは言う。
「2人揃って頼みじゃなく命令か、いいだろう」
そう言って総士はナマエに手を伸ばす。
「行くぞ!」
カウントダウンが始まった。
チクタク、チクタク
さあ、終わりにしようか。
僕らの物語を。
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