80 お父さん
一閃の光の如くルガーランスが降り注いだ。それは辺りの同化を吸収し、消滅させて行く。
「な、マークザインが2機!?」
零央は目の前の上空を物凄い速さで飛んでいく機体を思わず見つめた。
「一騎先輩と、誰が乗ってんだよ・・!?」
交差して飛び交い、次々とフェストゥムを消滅させていく。
そしてミールを狙う空からの侵略に2人は同じ様に刃を構えた。それらは柱を貫き、粉々にしていく。そしてこの日1つの命と引き換えに、それは護られた。
竜宮島にて、皆がその帰還を待っていた。マークザインと、もう1つの機体を。
「・・・」
皆が無言でそれを待つ。そしてザインから一騎が顔を出し皆が胸をなで下ろす。
「一騎、あの機体は」
降りて来た一騎に史彦が問い掛ける。
「あれは、ナマエの機体だ」
「なんだと?一体どこから・・いや、ならナマエは」
「呼んだ?」
突如何もない場所から現れた人物に、皆が驚き、そして待機していた大人たちは銃を向けた。
「ナマエ、なのか」
「・・質問が難しい」
史彦の言葉にナマエは表情を変えずにそう言った。
「お前は、誰だ」
ナマエの言葉に史彦は視線をきつくして再度問い掛ける。
「ナマエだよ、父さん」
「一騎、だが・・」
間に入る一騎に、史彦は納得がいかない様だった。
「心が、ないんだ」
一騎の言葉に史彦は織姫の言葉を思い出す。
『貴方達の望んだ姿であるとは限らない』
そう言う事か、と打ち付けられた。
「敵意はあるのか」
史彦の言葉に一騎は首を横に振る。
「大丈夫だよ、父さん」
「お父さん・・」
一騎の言った言葉にナマエが反応した。
「お父さん、私の・・お父さん」
言葉の意味は余り理解はしていない様だった。
「ああ、私がお前の父さんだ」
だが史彦はハッキリとそう言った。真っ直ぐにナマエを見つめながら。
「分かった」
「!」
ナマエはそう言ってその場から姿を消した。
「ナマエは、どこへ行ったんだ」
「島を歩いてる、嬉しそうだ」
感じるナマエの気配に一騎はそう言って微笑んだ。
「嬉しそう、心がないのにか」
「完全にない訳じゃない。無意識に探してるのかも知れない、自分の心の欠片を」
不安そうに顔に影を落とす史彦に、一騎は大丈夫だ、と告げる。
「俺が一緒にいる。だから安心して」
「・・分かった、何かあればすぐに言え」
史彦のそんな言葉に、何もないよ、と一騎は呟いた。
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