75 島


新たな旅路に着いてから56日目、遂に奇跡が起きた。

「島の、バードだ」

輸送機の中でそのメッセージを聞く。それは竜宮島からの合流地点で待っていると言う奇跡の様な言葉だった。

皆がその言葉を聞き届け、歓喜した。

「父さんの声だ、ナマエーー」

隣のナマエを見て一騎はハッとした。

「お、父さん・・」

その言葉に感情が伴っていない。

「ナマエ!」

異変に気付いた総士も声を上げた。

「お父さんの、声がする」
「!」

そう言ってナマエは表情を歪めた。

「お父さん・・っ私、ここにいるよ!」
「ナマエ・・」

手で顔を覆って涙を流すナマエに、ホッと胸を撫で下ろす一騎と総士。

「父さんが、島の皆が来てくれた。帰れるぞ、島に」
「ようやく、だな」

2人してナマエの頭を撫でた。それにナマエは更に涙を溢す。

そしてようやく合流地点へたどり着き、センサーに竜宮島が記された。

「行こう、皆で島へ」

シナジェティックスーツに着替え、決戦に備える。

「ナマエ、」
「ん、どうしたのかず、き」

「「!?」」

総士、真矢、暉は目の前の光景に思わず言葉を失った。

「な、なな、なにしてんのよ!?」

突然唇を重ねる一騎に、ナマエは顔を赤くして反論した。

「良かった、まだここにいるな」
「どんな確認の仕方よ・・」

俯くナマエと、それを見て悪びれる様子もなく悪い、と謝る一騎。

「僕たちもいる事を忘れるなよ」
「!?」

咳払いをして言う総士に、ナマエは肩をビクつかせた。

「ああ、忘れてないさ」

一騎の言葉に総士は思う、逆にタチが悪い、と。

「・・言ったんだな」

真矢と暉に捕まるナマエ。総士は一騎にそう耳打ちをした。

「いや、」
「お前・・!」

きっぱりと言い切る一騎に、総士は何か言い掛けてやめた。真っ直ぐな瞳でナマエを見つめる一騎に、言う言葉などなかった。

「だが、あの確認の方法は頂けないな」
「効果的だろ」

一騎の言葉に総士は はあ、とため息をつく。

「なら次は僕が実践しよう」
「なっ・・!」
「冗談だ」

総士がそう言えば、一騎はお前なぁ、と肩を下ろした。

「お前が言うと冗談に聞こえないな」
「心外だな、こんなにもユーモアに溢れていると言うのに」
「・・どこがだよ」

その自信はどこから来るのか、と一騎はため息を吐く。

「・・行くか」
「・・ああ、」

2人は歩き出す。

「あ、やっと来た!遅いよ!2人とも!」

ただ一筋の、光を求めて

「悪い」
「すまない」

ただ一つの希望を求めて

「帰ろう、私たちの島へ!」

願うなら、全ての人に争いのない世界を。

それを勝ち取る為に、全てを犠牲にする戦いが今始まる。









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