04 もどかしさ


「なんだよそれ!」

真壁家、父と子向かい合って食事をする。

戦闘を終えた息子の為、慣れない家事の末の食事を前にしながら、和やかな時間は長くは続かなかった。

「いきなりアルヴィスに住むってどういう事だよ!」

子、一騎は思わず身を乗り出して父、史彦に問い質す。しかし、問われている史彦は表情を変えず、黙々と自らが作った食事を口にした。

「・・そんなに、悪いのか?」

不安げに問う一騎。分かっている、史彦に声を荒げても何も変わらない。朝だってそうだ、ただ、何も出来ない自分に苛立っているだけ。

史彦もそれが分かっているのか、一騎を叱るわけでもなく、ゆっくりと言葉を返す。

「検査の為だ、しばらくすればすぐ家に帰れるだろう」
「そう、か」

史彦の言葉に少しは安心したのか、再び食事を取り始めた一騎を横目に見る。

一騎に言った言葉は、確証のない、言ってしまえば己の願望だった。

そんな事実が史彦の心に影を落とす。本当の事を言った方がいいのか。しかし、現パイロットは息子である一騎だけ。

島を守れるのは、一騎だけなんだ。

色々なしがらみに訳が分からなくなる。だからこそ、島を優先して考えなければ、と史彦は思う。

私情を挟めば、きっと違った今になっているかも知れない。でもそれは、未来を危うくさせる。

「明日から忙しくなる、早目に寝なさい」
「・・ああ」

ただ、そんな当たり障りのない事しか言えない自分がもどかしい。そんなもどかしさが、史彦を苦しめ続けた。

後日、一騎以外のパイロット候補が選出された。

真矢、翔子、咲良、剣司、衛、甲洋。

各々の心境はバラバラだった。そんな時、アルヴィスの廊下の先に見知った姿を見つけた。

「あれ、ナマエじゃないか?」

剣司が指差す方を皆で見つめる。少し距離はあるが、声が届かない距離ではない。

「おーい!ナマエー!」

真矢が手を大きく振りながら呼ぶ、するとその人物は一瞬皆を見て、違う方向へと歩き去ってしまった。

「あれ、ナマエじゃなかったのかな」

衛が首を傾げる。

「ナマエだと思う。少し、雰囲気が違ったけど」

真矢はナマエが去った方角を見つめながら呟く。

「ナマエの双子だったりしてな!」
「ナマエの双子は一騎でしょーが!」

剣司がふざけて言えば、咲良が拳を交えてツッコむ。そんなやり取りをナマエは角に隠れて聞いていた。

その頬には、流しても流しても枯れない雫が、伝っていた。

そして同時刻、一騎はアルヴィス内にて、1人の少女に出会う。
























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