41 声
竜宮島は再びフェストゥムの大群に襲われていた。
「・・・」
「ナマエちゃん?何故ここに」
マークザインを見上げるナマエに、保は首を傾げる。なんせ彼女がここに来たのは、あのマークゼクスに乗った日以来だからだ。
その頃、一騎は操と再び対話していた。降伏しろと悲痛の声を上げる操に、お前らの神様に逆らえと叫ぶ一騎。
そこへ史彦と美羽、弓子が訪れる。すると操は美羽を見つめた。
「彼女が希望です、真壁司令」
「そ、うし・・?」
先ほどの操とは打って変わり、凛とした唯住まいでそう言う。その声は他でもない、皆城総士のものだった。
「やめて!総士!君が消えてしまう!」
必死に抵抗する操。それでも総士は一騎に視線を移した。
「すまない、一騎・・頼む」
その言葉に一つ頷いて一騎は走り出した。
「・・来る」
マークザインを見上げていたナマエが、呟いたその瞬間。フェストゥムの触手がマークザインを捉える。
そして禍々しいものが溢れ出し、色々な物を破壊していった。そして影の中に見た光。それは希望ではなく、絶望の光。
「マーク、ニヒトだと・・!?」
保は信じられない様に目を見開く。そしてそこに現れた1人の少年。
「操・・」
「・・っ」
見上げるナマエと見下ろす操。悲しげに呼ぶナマエに、操は歯を食いしばった。
「ミールはこの為に僕を人の姿にしたの・・?」
コックピットに入る操は苦しげに呟く。そしてコアの元へと動き出す。
「!、ナマエ!?」
ザインの元へと駆け込んだ一騎の目に映ったのは、消えたニヒトを見つめ続けるナマエの後ろ姿だった。
「一騎、お願い」
ポロポロと剥がれ落ちる天井の遥か先を辛辣な表情を浮かべて見つめながらナマエはそっと呟く。
「操はね、総士だけじゃなくて私も守ってくれたの」
悲しそうな瞳には何が映っているのか、そう思いながら一騎はゆっくりとナマエに近づいて行く。
「そして人類軍の攻撃前まで彼のミールが私の形を保ち、そしてその術を教えてくれた。」
「あいつのミールが?」
一騎の言葉にナマエは頷く。そして真っ直ぐ一騎を見つめた。
「彼らのミールにどんな意図があったかは分からない。なぜ私を生かしたか、なぜ彼を人の姿にしたのか」
だけどね、そう言ってナマエは自分の胸に手を当てた。
「私が今ここにいるのは、彼らのおかげでもあるの」
ドクンドクン、指先に伝わる音にナマエはホッと胸をなで下ろす。
「だから、私も連れてって」
「・・・」
少し、予想は出来た。だからこそ一騎よりも先にここにいた。一騎が来る事を見越して。
でも一騎は否定も肯定もしない。真っ直ぐと見つめ合うだけの時間が数秒続いた。
その中で一騎は考える。ファフナーにナマエが乗る事に対し、何が起こるのか。はたまた何も起こらないのか。
確認する術も時間もない。でも、そんな一騎にも1つだけわかる事があった。
「ダメだ、って言っても来るんだろ」
1つため息を吐いて一騎はそう言った。ナマエはその言葉にふふ、と笑いをこぼす。
「よくお分かりで」
「双子、だからな」
くすくすと2人で笑う。そして、キュッとお互いの手を握った。
「じゃあ、行こう」
「うん」
2人が目を閉じれば、その姿はその場から瞬時に消えた。
金色の影を残して。
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