21 可能性


次の日、パイロット達はアルヴィスに召集されていた。

だがそこに、一騎とカノンがいない事を話しながら、辿り着いた先で一同は言葉を失う。

「甲洋は、全細胞を凍結させ、封印するはずだった」

最初に口を開いたのは先に来ていた総士だった。

「封印!?」

皆が驚く。そして何より、その甲洋がいない事が1番の問題だった。

こうなった以上、フェストゥムとして処理する。そう言った総士の言葉に、子供達は駈け出す。

「昨日、感じたのは・・甲洋だったのかも」

ふと、ナマエが消え入りそうな声で呟く。だとしたらあの後ソロモンが反応しなかったのも説明がつく。

(まだ可能性がある)

総士は先ほど言った自分の言葉とは真逆の考えを浮かべていた。

「ナマエ、行こう」
「総士くん」

俯くナマエにそう言うと、史彦が止めに入る。

「大丈夫です、彼女に接触はさせません」

大人達が隠している事を粗方理解している、と総士は目で訴える。そんな総士を見て、史彦はナマエを横目で見る。

俯き、暗い表情。普段の彼女からは想像も出来ない絶望に満ちた表情。それはきっと、先ほどの総士の言葉が頭の中で繰り返されているからだろう。

「・・くれぐれも、気を付けてくれ」

何か考えがあるのだろう。史彦はそんな曖昧な、でも確信めいた総士の言葉に賭けた。

自分の娘がこんな顔をするのを見ている事しか出来ない自分は、誰かに託す事しか出来ない。それが歯痒く、重く心にのしかかる。

ただ、今より少しでも彼女の心が晴れるように。それを祈る事しか、出来なかった。

そしてナマエと総士は咲良の家の道場に甲洋含め、皆が立て籠もったと言う情報を得てそちらに到着する。

大人達は銃を持ち、親達は声を上げて説得している。

「総士、」

総士の後ろに佇み俯くナマエが震えた声で総士の袖を摘んだ。

「甲洋は、殺されちゃうの・・?」

ナマエは酷く怯えた様にそう言った。何故彼女がこんなに恐怖を抱いているのか、総士は分かっていた。

だからこそこの場に連れてきた。正直、総士も賭けだと思っていた。だからこそ何とかしようと、ここへ来た。

「!」

震える手を掴んだ。力強く握って、そして驚いて顔を上げたナマエに笑った。

「僕を信じろ」

ただそれだけ言って敷地内へと歩き出した。

「総士・・」

その背中をナマエは見つめていた。強く握られた手の平に、彼の熱を感じながら。














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