16 目覚め


「ん・・っ」

紅音を食らった敵との戦闘の最中、一騎もまたファフナーと共にその敵に飲み込まれる形になっていた。そして目を覚ますと、目の前には幼き頃の総士がいた。

総士は言う。1つになろう、と。そこに1人の少女が現れる。一騎はその少女に見覚えがあった。

目を開いているのは初めて見るが、間違いない。アルヴィスの地下で眠っていた少女だ。

なぜ彼女がここに、と疑問に思う間も無く彼女は問い掛ける。

「あなたはここにいる?それとも、いなくなりたい?」

一騎は彼女の問いに俯く。ずっと、いなくなりたかった。総士を傷付け、責められる事なく、謝る事すら出来ない状況が苦しくて仕方なかった。

でもそれでも一言謝りたくて、自分が奪ってしまった目の代わりをやろうとして苦しんでいた。

「一騎、」
「ナマエ!」

すると総士の横にナマエの姿も現れる。彼女は優しく微笑み、手を差し伸べた。

「あれも思念体。一騎の中にいるナマエだよ」
「・・・」

一騎はハッとした。何故気付かなかったのだろう。

ずっと何年もこんな想いを抱えて来た。だけど、それだけだったらとっくに一騎はおかしくなってしまっていたかもしれない。

それ程にこの件に関して一騎は思い詰めていた。だが彼女といる時は、1人じゃない、ここにいていいんだ。と思えた。彼女が、そう言ってくれている気がしていた。

どうして、気付かなかったんだ。いつもは影に飲み込まれそうな時、彼女が手を引いてくれた。

自分の名を呼びながら、眩しい笑顔で導いてくれてたんだ。自分はずっと、ナマエに護られていたんだ。

それなのに自分はどうだろうか。ナマエが離れた途端このざまだ。そんな事にも気付かず、挙げ句の果てに眠り続ける彼女に背を向けた。

いつも握ってくれていた手を、自ら離してしまった。

「泣かないで、一騎」

気付けば拳を握り締めて泣いていた。何より、自分が情けなくて。そんな一騎をナマエは優しく抱きしめた。

「大丈夫だよ一騎、」
「ああ、そうだな」

一騎は涙を拭って、ナマエに笑いかける。ごめんと、ありがとうを呟いて。

そんな一騎に分かってると言わんばかりに、ナマエも微笑んだ。

「だって、」
「私たちは」

額を合わせ、手を握り、目を閉じた。


「双子だから」


一騎はゆっくり目を開ける。

新たな誓いと決意を胸に、消えてしまったナマエに呟く。

「今、行くから」

そして、アルヴィスにいるナマエも目覚める。

「かず、き・・?」

声が聞こえた気がして目が覚めた。だが誰が私を解放してくれたのだろう。

周りを見渡しても人はいない。そしてふと、1つの存在に気付いた。感じた事のあるような、初めて感じるような、何か。

それに向かい、ナマエは静かに歩き出したのだった。
















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