13 願わくば


「珍しいな、君が彼女に会いに来るなんて」

ナマエの眠る特別治療室に現れた人物に、総士は珍しく驚いた表情を見せた。

「・・皆城くんはいつも会いに来てるの?」

総士の言葉には触れずに、訪れた真矢は言葉を返した。久方ぶりに見た彼女は、まだ眠り続けている。何も知らないままで。

「彼女が来て欲しい奴が、来てはくれないからな」

誰も来ないよりはマシだろう、と総士は自嘲気味に呟く。そう、彼女が1番会いたいであろう人物は島にはもういない。もう帰って来ないだろう、と総士は考えている。

それはもう、彼女が目覚めない事とイコールで結ばれている気がして総士は眉をひそめる。

「一騎くんね、私にこう言ったの」

真矢の言葉に、総士は顔を上げ次に語られる言葉を待った。

「俺とナマエは、本当の双子なのかなって」
「・・そうか」

真矢は総士の態度にまゆをしかめた。やっぱり、そう心の中で呟きながら、何か確信めいたものを総士に感じた。

「でもその後慌てた様に言ったの、忘れてくれ、って」

まるで、無意識に出た言葉みたいだった。

それが真矢には気掛かりで仕方がない。それは疑問なのか、それとも

「どちらにせよ、君には関係ないだろう」
「・・っ」

総士は口調を変えずに言う。その事が真矢からして更にその言葉を冷たく、重く感じさせた。

「じゃあ、皆城くんには関係ある訳!?」

真矢が声を荒げる。だけれど総士はナマエから目を離さず、僅かに眉をひそめるだけだ。

「それすら、私には関係ないって言うの!?」

もう、いい。そう言い残して真矢は部屋を後にした。

そしてまた、機械音だけが静かに響く。真矢が声を荒げていたからか、先程よりも更に静まり返った様に総士は感じた。

「僕にも、関係ないさ」

繋がっていると思っても、繋がりたいと思っても、叶わない事がある。思い違いの時がある。

いっそ、壊してしまおうか。全てを否定し、全てを肯定する。

その先が今と少しでも変わっていれば、ただそれだけでいい。

「君は、どうしたら目覚めるんだ?」

問うても返事はない。当然だ。彼女は今、意識の中を迷走しているのだから。

だけれども、願わくば君を目覚めさせるのが僕であればいい、と思う。

「ふ、何を考えているんだ。僕は」

自らを鼻で笑って頭を振った。くだらなくて、でも僅かな可能性を秘めた、輝かしい夢。

ただそれだけでいいのに、それさえも僕には叶わない。

「双子じゃない、か」

先程の遠見から聞いた一騎の言葉を思い出す。関係ないだなんて、随分ひどい事を言ったと自覚はしている。

だけれども、2人の仲を掻き乱す恐れのある存在を作りたくはなかった。

大切な2人の、まだ気付いていない部分に触れて欲しくはなかった。

「だとしたら、君は悲しむのか?それとも、」

その先の言葉は口に出さず、総士も部屋を後にした。

「・・・」

聞こえるはずのない答えに、打ち拉がれながら。























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