08 歌声
「一騎!!」
人類軍を襲っていたフェストゥムに攻撃を放ってしまった一騎に、総士が声を上げる。
「俺は、助ける!」
一騎もまた総士に向かう様にして声を上げた。数秒見つめ合い互いに引かない。そんな中、ナマエの声が2人の間を割って入った。
「来るよ!」
その言葉に2人は互いから目を離す。そして、視線を変えた先にはこちらに標的を変えたフェストゥムがいた。
「仕方ない、これからは僕の指示に従ってもらう。いいな」
ため息混じりに言う総士の言葉に、不服そうながらも頷く一騎。そして総士は舵をフェストゥムとは逆にとった。
「総士!」
「距離を取る」
不満気な一騎に、総士は冷静に告げる。そしてナマエも2人を追う様に続いた。
「どうするの?」
追ってくるフェストゥムを横目に見ながら、ナマエが問い掛ける。すると一騎が狙いを定めたかの様にフェストゥムを見つめる。
「叩きつけてくれ!」
「一騎!?」
嘘でしょ、とナマエは焦りの声を上げる。そんなナマエとは逆に、総士は戦闘機を旋回させ、一騎は手に力を入れた。
フェストゥムに向かって一直線に下降していく一騎。そしてフェストゥムのコアへとマインブレードを突き立てた。痛みにもがくフェストゥム。そして闇雲に攻撃を繰り返す。
「くっ・・!」
「一騎!」
暴れるフェストゥムの背後から、ナマエが羽交い締めにする様にフェストゥムを抑え込む。しかし一騎は振り落とされ、標的はナマエへと移る。
「な、に・・?」
そしてナマエへと振り向いたフェストゥムは問い掛ける。
ーーーあなたは、そこにいますか?
「あ、」
突如頭に流れ込む景色。崩壊していく街。逃げ惑う人々にそれを追うフェストゥム。そして、
「や、やめて!!」
「ナマエ!脱出しろ!」
乱れていく思考に悲痛の声を上げるナマエに、総士は指示を出す。
「やめっ、私は・・!」
「くそ・・っ!」
どんどんと結晶化していくマークゼクス。最早ジークフリードシステムからもコックピットの強制射出は不可能だった。
「っ!!ナマエーー!」
落ちて行く景色の中に、敵に飲み込まれようとしているナマエの姿が見える。
「かず、き・・っ」
薄れていく思考を裂いて、一騎の呼ぶ声が聞こえた、気がした。
「わたし、私は・・」
その時だった。
「!」
「う、た・・?」
突如現れた小型機。そして島全体に響き渡る歌声。
「これは、まさか・・」
総士は表情を引き締め、小型機によって浮いている一騎の元へ急ぐ。
「一騎、分かってるな」
見据えた先には同化しかけているマークゼクスとフェストゥムに刺さるマインドブレード。
一騎は銃を構え、狙いを定めた。
「ナマエ、今助けてやるからな」
彼らはまだ知らない。
事実が時に、余りにも無情な事を。
見上げた空が、
同じそらとは、限らない事を。
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