07 疑問
「あれが、フェストゥムなんだね」
視線の先に、人類軍の戦闘機を追うフェストゥムの姿がある。
懐かしい様な、寂しい様な、複雑な感情に襲われた。これはファフナーに乗った事による変性意識と言うものなのか、定かではない。
「具合はいいのか?」
「・・うん、」
一騎の質問にナマエは言葉を濁す。頭は痛む。だがファフナーに乗った時から、崩れ去りそうな痛みはなくなった。
「大丈夫だよ、一騎」
「そうか」
そんな会話をしているナマエの前に、クロッシングした総士が現れる。
「ごめんね、総士」
色々と。そう付け加えて、苦しく微笑むナマエに、総士は険しくしていた表情を緩めた。
敵わないな、と心の中でため息をつく。
何故だ。他の奴がこんな事をしたら懲罰だと罵ったかも知れない。
なのに、あんな風に、全てひっくるめて言われてしまったら何も言い返せない。
僕も随分、彼女に甘いな。と総士は自嘲する。
「ナマエを連れ戻してくれ!」
総士の耳に史彦の言葉が聞こえた。
焦りに満ちたその声に驚きながらも、総士は疑問を覚えた。
なぜ大人たちがここまでナマエを庇護するのか、それは今この真壁司令の言葉よりもずっと前から感じていた事だった。
1年前にフェストゥムが近付いた日に始まり、何らかの関係があるのは分かるが、用心する様に。今は亡き父、公蔵もそれしかナマエの件については教えてはくれなかった。
先日、自分の腕が結晶化した事と関係あるのか。実際、あれは自分が原因か、ナマエが原因か分かっていない。
そして、その後の史彦の言葉は一騎のフェストゥムへの攻撃音により、無情にも総士の耳には届かなかった。
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